115  二人のバラガキⅡ

「それにあなたもですよ」



 振り返って、ハウロックも睨みつける。



「そもそも二人が戦ったら学園が一つや二つあっても足りませんよ」



 エミリーは深々と溜息を漏らし、面倒そうな顔をして席に座る。



「それがどうした。錬金術が魔法に劣っているとでも言いたいのか?」



「別にそんな事、言っていませんよ。ただ、二人が魔法と錬金術を手加減して使わないわけないですよね。ましてや他の人が巻き込まれて怪我したらどうするのですか?」



「確かに……」



 ハウロック小さく頷く。



「なら、簡単に決着をつけたいのならボードゲームとかにすればよろしいのでは?」



「ボードゲームだと? エミリー、お前は何が言いたいのだ?」



「ですから、どちらがより頭がよいか。分かるでしょ。駆け引きや心理、精神状態など全てがどちらが上回っているか分かりますしね……」



 エミリーは、小さく欠伸をして、最後に紅茶を飲む。



「ボードゲームか……ハウロック、貴様はやったことあるか?」



「ああ? チェスとかぐらいだな……」



 ハウロックを最後の一口を入れて、食べながら話をする。



「チェスか……それなら――――」



 と、言いかけた時だった。



「大変だ‼ 闇の魔導士と錬金術師がこの学校を襲おうとしている!」



 いきなり食堂内に入ってきた男性教師が、大声で叫んだ。



「午後からの授業は休校だ。今から名前を呼ぶものは私の所に来てくれ。ジョン・デミトロフ、エミリー・ウィリアム、ジュラ―ド・ハウロック、それから……」



 と、次々と名前を呼び出す。



 そのほとんどがこの学校内の成績優秀な生徒ばかりだ。



「闇の魔導士たちだと?」



「ハウロック、何か知っているのか?」



「一応な」



 ハウロックは、険しい顔をして、水を飲み干す。



「闇の魔導士と錬金術師というのは、簡単に言うとテロリストみたいな連中だ。目的を果たすためなら人を平気に殺す冷徹な集団であり、実力はプロレベル以上だ。対応するのにも一苦労すると言われてある」



「それでなんで俺達の名前が挙がっているのだ?」



「知らねぇーよ。それよりも俺はあんたの侍女の名が挙がっている方が疑問だと思うけどな」

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