062  剣の魔導士とそこにあるものⅥ

 読み終えると総司はフッ、と笑い、紙を三久に返した。



 何を知ったのか、三人はキョトンとしていた。



「あの……この意味が分かったのですか?」



「ああ、それは錬金術の等価交換と魔法の等価交換を意味している。錬金術はこの世にある物質を変換させることはできるが、一になったものが0を生み出すことは出来ない。つまりはこの世に存在しないものは決して作り出すことは出来ないという意味だろうと思う」



 総司は煙草の代わりに口に銜えているシュガーコレットをガリガリと食べ、続きを話す。



「魔法の等価交換とは、つまり一なる魔法。その昔、魔法は一つの魔法から生み出されたと言われている。つまりは0から三は同じ意味だとしても、三から一は複数の魔法を組み合わせて、ないものを新たに作り出すことができる。これが錬金術と魔法の等価交換の違いだ」



「だったら裕也君はどうしてこんな言葉を残したのですか?」



「つまりはその終わりと始まりが近い。確信は出来ないがそれだけ教会側はやばい存在だっていう事だ」



「だったら急ぐべきです。早く裕也君を救出しなければ……」



「待て待て、俺はレディー達を危ない目に遭わせたくはないが、それを聞く三人ではないことぐらい知っている。まずは作戦を立てるべきだ。裕也の作戦が裏目に出たっていう事は、容易ではないという事、つまり、俺の出番ってわけだ」



 総司はニヤッと、いたずらっ子のように笑う。



「三久さん、錬金術で――――」




     ×     ×     ×




 翌日――――



 ウエストシティの街にも太陽の光によって輝いていた。



 アルブレヒト教会の地下牢――――



 裕也は両手を魔封石で自由を失われ、魔法、錬金術を使うことができない状態にいた。



「へぇ……ここ教会の地下ってわけか……。小汚い所だな」



「そうですか。それは良かった。その昔、この地下牢は拷問部屋、処刑場と呼ばれておりました。今では使われない牢獄となり果てたのですがね」



 柵の向こう側で拘束されている裕也を見下ろすマーロスが檻の扉を開いて、食事を持ってきた。



「さぁ、食べなさい。捕虜と言っても死んでもらっては困りますからね」



「気前はいいんだな。さすが教主様だけはある」



「ははは……。それは誉め言葉と受け取っておこう。貴様には実験体になってもらう予定だからな。ただでは殺さないさ……」

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