060 剣の魔導士とそこにあるものⅣ
「そのまさかでしょうね……」
「ええ、あいつがこの街にいるって事なの⁉」
「この街はあの人の出身地でもありますからここに存在してもおかしくはないでしょう」
「どうすんのよ! 三久、あんたが何とかしなさいよ‼」
「私ですか! 二葉、お願いします」
「私はパス。あの性格には一花が的確だから……」
「一花、お願いします。あなたが一番効果抜群なんです」
三人は話し合いながら互いに呼び出しに応じるのを押し付け合って、二葉と三久が最終的に一花にすべてを託した。
三人が苦手としている扉の向こうにいる男が叫ぶ。
「そこに裕也がいるんだろ⁉ 裕也、開けないとこの扉ぶち壊すぞ!」
と、物騒な言葉が飛んでくる。
三人は同時に深々と溜息を漏らし、一花が仕方なく立ち上がり、そのまま扉に向かって歩き出す。
ドアノブを握り、呼吸を整える。
ゆっくりと反時計回りに回し、扉を開ける。
すると、目の前には右ひざを床につき、しゃがみ込んでいる男がいた。
右手を前に突き出し、その手に持っているのは赤色の薔薇だった。
「あなたのために参上しました、一花さん。どうぞ、この赤薔薇を受け取ってください」
「は、はぁ……」
一花は苦笑いしながら男から薔薇を受け取る。
そのまま男は体を起こして、すぐさま部屋に入り、ベットに座っている二葉と三久を見つけると、日本の赤色の薔薇を取り出し、左右に一本ずつ持って二人に手渡しする。
「二葉さん、相変わらずお綺麗で……三久さん、今日も可愛らしいですね!」
「ありがと……」
「ありがとうございます……」
二人もまた一花と同じように苦笑いをして、男から薔薇を受け取る。
「それにしても三人揃って綺麗でおまけに性格がそれぞれ違うなんて、俺は……俺は! 今、物凄く感動している!」
男は叫び、涙が出るほど何故か感動していた。
綺麗な女性、美しい女性はどこにでもいるのにこの男はどこに行っても綺麗な女性、美しい女性を見たらこうやって女を口説くのだろう。
「あの……どうしてあなたがここの場所を知っているのですか?」
三久が恐る恐る訊く。
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