030  三年後の世界Ⅶ

 錬金術師たちは常に水銀に関心を寄せ、水銀に何らかの原料を混合させることで、反応を見ながら賢者の石がそういう風にできていると考えてきたが、ことごとく失敗に終わっている。



 水銀と硫黄の化合物である硫化水銀には色は異なり、赤色は極めて低いと言われている。その中でも天然で算出されているのが辰砂と言われている。



 辰砂とはアジア大陸にある国で不老長寿の霊薬仙丹の原料とされていた。



 それでも錬金術師たちは賢者の石を未だに完成できずにいる。



 そして、黒魔法、白魔法もまた、賢者の石と同様、やみ深く眠っているのだ。



「裕也君、私達、お風呂に行ってきますから……。部屋の鍵は出る時にしっかりと閉めておいてくださいね」



 考えている間に三人はお風呂の準備を終え、部屋を出る所だった。



「あ、ああ。先に行っててくれ。俺はもう少し、部屋に残ってから行くから……」



 そう言い残すと、三人は廊下に出て、扉が閉まる音が聞こえた後、裕也はベットの上で大の字になり、目をつぶった。



 ――――こうなったら電話してみるしかないよな。



 ――――しかし、電話はフロントしかないしな。それよりも無効と繋がらなかったら問題だよな。



 裕也はすぐに起き上がり、



「やはり、連絡を取った方が早いな」



 と、小さく呟くと靴を履いて、立ち上がり、部屋を出た。






「それにしても、ユーヤはなんであんなに難しい顔をしていたのかな」



 二葉は心配そうにしていた。



 重たい目蓋を上げながら、ふらつく体を安定したバランス感覚で服を着替えていた。



「仕方ないですよ。今回の依頼人であるあの人が急遽来れない状況になったんですから……」



「それにしても変ね。手紙にはたった一言だけしか書いていなかっただなんて……」



 三人は脱衣所で服を脱ぎ、浴場の中へと入った。



 女湯は室内に冷水とお風呂があり、外には露天風呂が設置されている。



 彼女たち以外にも複数の女性たちが体を流しにここに来ていた。



「本当ですよね。何らかのミスで観察されている身になっているか、もしくは他の事情でこちらに顔を出せなくなったとしか考えられませんね」



「でも、それが本当だとしたら問題外……。普通はユーヤに連絡すべき」



「二葉が言っていることは分かります。それでも伝えることは出来なかった。そう考えを取るべきです」



 蛇口を開け、お湯を桶に溜め、髪の毛にお湯を流して濡らす。



 目の前に置いてあるシャンプーの液体を手のひらに載せ、しっかりと髪を洗う。

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