029 三年後の世界Ⅵ
――――ま、考えは風呂の中でもするか。
裕也は考えることをやめ、魔導書をアイテムボックスから取り出して、読み始める。
三久が学んでいる錬金術とは違い、魔導書、つまり、魔法を学ぶ本はあまり表舞台に出ていない。
錬金術には人体錬成・クローン人間の作り方が存在している。だが、材料や作り方を知っていたとしても決して行ってはならない事である。
人体、約70㎏の場合の組織・物質の構成は――――
酸素 45.5kg、炭素 12.6kg、水素 7kg、窒素 2.1kg、カルシウム 1.05kg、リン 0.7kg、イオウ 175g、カリウム 140g、ナトリウム 105g、塩素 105g、マグネシウム 35g、鉄 6g、フッ素 3g、ケイ素 2g、亜鉛 2g、ストロンチウム 320mg、ルビジウム 320mg、鉛 120mg、マンガン 100mg、銅 80mg、アルミニウム 60mg、カドミウム 50mg、スズ 20mg、バリウム 17mg、水銀 13mg、セレン 12mg、ヨウ素 11mg、モリブデン 10mg、ニッケル 10mg、ホウ素 10mg、クロム 2mg、ヒ素 2mg、コバルト 1.5mg、バナジウム 0.2mg
人体やクローン人間は簡単な造りとなっているのだ。
クローン人間はこれに分子・DNA・細胞・生体のコピーである。ここまで研究して、ようやく人体錬成の最初の工程に繋がるわけである。
錬金術師というのは、科学者とあまり変わらない。この世の未知なるものを研究し続け、それを現実にする。
錬金術師というのは探究者でもあるのだ。
この世界にはあらゆる元素から気体から液体、液体から個体、個体から気体へと三角関係で結びついており、それが人間たちの生活に使われている。
魔法も同じように自然と向き合い、人の体内の底にある魔力に供給し、呼吸を合わせ、体内から魔法を放つ。
そして、魔法もまた研究を重ね、進化し続けているのだ。
なら、賢者の石はどうだろうか。
賢者の石はそもそも中世ヨーロッパ時代に錬金術師が鉛などの卑金属を金に変える際の触媒となると考えた霊薬である。不老不死の永遠の生命を与える存在はその後の研究によって付け加えられたものである。
中世ヨーロッパ時代、中世ヨーロッパ錬金術師であるジャービル・イブン=ハイヤーンの説に、水銀と硫黄の2要素説がある。
その2元素を比率により卑金属や貴金属が生じた。
そして、そこに塩が加わり、3要素説が産まれたのである。
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