028 三年後の世界Ⅴ
「なんだ?」
裕也は、振り返って一花の方を見た。
「なんであんたが私達と同じ部屋に泊まることになっているわけ?」
一瞬、この空間の時間が止まったかのように他の二人の手が止まる。
「そ、そう言えばそうですよね。なんで裕也君が私達と同じ部屋にいるのか不思議ですよね」
「私は別に大丈夫だけど。だって、ユーヤは今まで一緒にいた仲間だし、気にしてない」
「でも、あいつはあれでも男よ!」
「仕方ないだろ! 空いている部屋がここしかなかったんだからな! それに一花、今更そんなに気にしたって無駄だぞ。俺達は三年間ずっと一緒に行動しているんだからな」
「だとしても、女の子には女の子の事情ってものがあるのよ」
一花は顔を真っ赤にして、裕也に出て行けと言っているように聞こえる。
「それに風呂場は一階に大浴場があるし、着替えの時は裕也君が外に出ておけばいいんじゃないんですか? 一花、それでいいですよね」
「まあ、三久がそう言うならいいけど……。確かにこの男にそんな勇気にいる度胸なんてあるわけないしね……」
「そんな度胸があったら今頃、こんな状況じゃねっつーの……」
裕也は、荷物を自分の寝るベットの近くに置き、濃い緑のマントをその上に置いた。
――――うかつだったわ。まあ、三久が一番窓側を渡してくれたのはいいけど。裕也と同じ部屋だなんて……。嫌いって言うわけじゃないけど……それでも今日からいつまでこの生活が続くのよ。
一花はベットの上に座り、黙り込んでしまう。
三久は錬金術の本を読みながら、錬成陣で何かを作り始めた。
二葉は大きな欠伸をして夕食の時間まで一眠り始めた。
――――それにしても大佐の野郎。なぜ、俺にすべてを任せた。
――――確かに大佐も忙しいのは知っているが、この街の状況を無視する人ではないはずだ。
――――だとするなら考えられることは一つ、大佐に動けない事情ができたとしか考えられない。
――――でも、なんであの人をこっちによこしたんだ? すぐにばれるだろうに……。
――――分からない。一体、何を考えてやがる……。
裕也はさっき大佐からもらった手紙の内容を思い出しながら裕也は不満げに天井を見上げた。
この街の調査を依頼してきたのは、その大差自身である。
軍の要請ではなく、個人的な依頼だったのだ。
その依頼こそおかしい。なぜ、そんな依頼を自分たちにしたのかも未だに分かっていない。
「やべぇ……。全く分からなくなってきた……」
と、言葉を漏らした。
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