027 三年後の世界Ⅳ
「はぁああ! まさか、あの野郎、逃げたって事⁉」
「ああ、そう取るしかないだろうな。それと同時にここの調査を俺たちに任せるつもりらしい。今度会ったら一発ぶん殴らないと気が済まねぇ」
手紙を原型が残らない程度まで破り、ゴミ箱へと思いっきり投げた。
「ユーヤ、あまり大声を出すと周りの人に迷惑が掛かるよ。後、一花、うるさい……」
「二葉、一応、あんたのせいでもあるのよ! 少しは反省しなさい!」
「反省? なんで、私が起こられないといけないの?」
「あんたが、これを私たちにすぐ見せなかったからでしょ」
「意味不明。だったら、もっと悪いのはあの大佐とその部下一名」
「いや、それはそうだけど……それでもこの中ではあんたが一番悪い」
「…………」
二葉は裕也の方を見る。その透き通った眼は何かを訴えているかのようだが、それは通るはずもない。
「今回はお前が悪い」
「馬鹿……」
二葉は頬を膨れ上がらせたままそっぽ向く。
だが、こればかりは一花の言う通りだ。どれだけ二葉が言い訳しようとひっくり返ることはない。
この世界はそもそもゲームの世界だったが、今になってはそうじゃなくなってしまった。
元々あったHPやMPもなく、ましてやレベルまでもが廃止されていた。
人を傷つければ現実と同じく、血が溢れ出して生と死がはっきりとしている。唯一、手元に残っているのは、魔法とアイテムボックス、装備ボックスのみ。それも自分が所持しているものしか持ち運ぶことができない。
「やってしまった事には仕方がない。一度宿舎に戻るぞ……」
裕也たちは酒場を出て、宿舎へと向かった。
街はオレンジ色の夕日に包まれて、影は東の方へ大きく伸びていく。
この街から一歩外に出ると、荒野が広がっている。
ここは昔、四方の街の中で活気のない街だったらしい。
だが、ここ数年になって一気に訪れてみたい街ランキングトップ5に入ってきている。
裕也たちの泊まる宿舎は一人一泊3000Gの安い金額で泊まることができる場所である。
宿舎に入り、チェックインを済ませると四人は同じ部屋に入る。
部屋の中には四つのベットが置いてあり、手前から裕也、二葉、三久、一花の順に荷物を置き、ひと段落着く。
「ねぇ、一つ疑問に思ったんだけど言ってもいい?」
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