第3章  三年後の世界

024  三年後の世界Ⅰ

 マリエスト国・セントラル中央司令部――――



「そうか。奴らがこちらに向かっていると報告があったんだな?」



 男は窓の外を見ながらフッと微笑んだ。



「はい。彼らが先日、西の街・ウエストシティで起きた事件に関与していたことが分かりましたからね」



 女は自分の入れた紅茶を飲みながら、ソファーの上でゆっくりと書類に目を通していた。



「その件に関してはこちらの方でなんとか処理しているから大丈夫だが、なんで、彼らはいつもトラブルの中心にいるんだ? なぁ、私はどうすればいいと思う?」



「そうですね……。まずはしっかりと自分の仕事をするべきじゃないでしょうか? そもそも、大佐、あなたがいつも仕事をしないからそれを苦労しているのは誰ですか?」



「確かに私が自分の職務を怠っていることは分かっているが、それには色々と理由があるんだぞ」



「どんな理由です?」



 女は上司である男に訊いた。



「うむ。それは……」



「それとは?」



「私にも分からん。だが、やらなければならない事だけは色々とある」



「聞いた私が馬鹿でした。それなら溜まりに溜まった書類に目を通してください。この前の西の事件による報告書です。いいですね。今日中に目に通しておいてくださいね!」



 女は念を押してそう言った。



「分かっている。話は変わるが……例の案件についてはどうなっている。上はまだ何か隠しているのか?」



「そうですね。我々に隠していることは百パーセント間違いないでしょうけど、そこに踏み込むまでにはまだ、時間がかかりますね」



「そうか……。それならそれでいい。引き続きよろしく頼むぞ」



「分かりました。しかし、この司令部の地下室。セントラルドグマには一体何があるんでしょうね?」



 女はティーカップをテーブルの上に置き、不満そうな表情を浮かべた。



「どうだろうな。もしかすると、この世の万物に触れてはならないもの。もしくは、この国の黒い歴史の中に消え去られたはずのものが埋まっているのかもしれん」



 男は自分の席に戻ると、ドサッと音を立てて座り、机の上に両肘を当て、両手を握った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る