025  三年後の世界Ⅱ

 ――――問題は山済みだが、まずは早めに奴らとコンタクトを取る必要があるな。



 男は、目の前に並び立つ書類の山を見て、深々と溜息を漏らした。




     ×      ×      ×




 約二週間前――――



 ウエストシティにある酒場――――



「ねぇ、裕也。この街にはどれくらい滞在するわけ?」



 三年前より、肩よりも少し髪を伸ばして、左右に黒い布で髪留めを結んだ黒川一花が話しかけてきた。



「ああ、調べ物が終わるまでだろうな……」



 桜井裕也は、水を飲みながらそう答えた。



 裕也の隣には二葉が座っており、目の前にいる一花の隣には三久が座っている。



 四人はこの三年間、この国と世界中を転々としながら、再びこの国に戻る途中だった。



 三年前まではそれぞれが何の知識もなく、この世界で違う生活を過ごしており、裕也はレベル10。一花、二葉、三久の三つ子は奴隷としてセントラルの広場で売られていた。



 それからいろんな出来事があり、三年の月日が経った今日、四人は一日前にこのマリエスト国西部に位置する街、ウエストシティに入っていた。



「それにしてもこの前のアレは偽物だったとは思わなかった……」



 二葉は残念そうにしながら、サンドイッチを口の中に入れた。



「仕方ないでしょ。そう言う時だってありますし、それにそういったものほどそう簡単には見つかりにくいものなんです」



 三久はそんな二葉を見て言った。



 ――――さすがにこの三年間、旅をしながら探し回ったのは損ではなかったが、さすがにまがい物を何度も目にすると悔しくはなるよな。



 ――――それにこの街の噂は前から知っていたが、イメージと違うんだよな。



 裕也は、黙り込みながら深々と考えていた。



 この三年間で魔法による黒魔法、白魔法、そして、錬金術による『賢者の石』を探し回っていた。



 黒魔法、白魔法は魔法の中でも覗いてはいけないものであり、その魔導書がこの世界のどこかにあることは分かっていた。



 それと同時に、『賢者の石』も人が生み出してはならないものが世界中のあちこちで見つかっているという情報を得ていたのだ。



 黒魔法、白魔法、賢者の石は、それぞれ違えど、一つに繋がる恐ろしいものである。

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