1st Dive:Vapor Trail

Vapor Trail アニメver. 脚本

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本編前告知(必読)


 これは昨年YouTubeにて公開した自主制作アニメ『Vapor Trail』(現在非公開)の脚本です。故に本編の重大なネタバレが含まれます。その代わりこれを見ておけば本編第一部は読まなくてもなんとかなります。


 アニメ版は作画枚数7028枚、本編35分。一部の効果音以外すべて一人で制作した百合SFロボットアクションです。是非。


 収録中に生じた細かい変更等を拾えていない可能性がございますのでその点は何卒ご了承ください。(主人公→未宙、ヒロイン→リザ)


 尚、文中の表記揺れはカクヨム版本編を決定稿とします。


 カクヨム版第一部は先日完結。第二部は12/9(水)より連載開始予定。もう暫くお付き合い頂けると幸いです。


 以下本編です。何卒。

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本編ラストの髪が伸びたノルンの後ろ姿。遠くに崩れた軌道エレベーター。


ノルン『2079年。人類は世界初の軌道エレベーターを建造。しかしそれは、新たな戦いの幕開けだった。オールド・レッド。宇宙より現れた巨大なそれは、抵抗をものともせず軌道エレベーターを占拠。人類はそこから飛来する敵性飛行体、ベイカントとの戦争に突入した。――これは、戦いの時代。私の愛した人が、最も愛した人とともに、空を翔けた記録である』


暗転、プロジェクトタイトル。




 未明の草原を駆ける二つの影―12歳くらい

 息遣いがふたつ


リザ『未宙、勝手に外に出て……ママにみつかったら…』


未宙みそら『大丈夫! この時間は小さいのの面倒見てるからあたしたち年長組は大丈夫だよ!』


 小高い丘に上る主人公。後から息を切らしてやってくるヒロイン


未宙『リザ! 見てみろよ!!』


 エンジン音、哨戒に出る二機のセヴンス。


未宙『すげー、あたし、絶対アレに乗って飛ぶんだ』


リザ『けど大人たちがあれは危ないって――』


未宙『危ないのは戦ってるウチュージンだろ? あたしはただ自由に空を飛んで――』


リザ『どこにいくの?』


未宙『どこに、って――』


リザ『どこにも行かないって言ってくれた。ずっとそばにいるって言ってくれた――』


 後ろから抱き着くヒロイン


未宙『大丈夫だよ、どこにも行きゃしないって……』


 向かいなおる主人公


リザ『本当?』


 涙目のヒロイン。朝日に照らされて髪留めが輝く


未宙『ああ、本当。離れたりしないよ。戻ろう。見つかったら朝ごはん抜きかも』


 頭をなでて笑う主人公




 場面転換、孤児院内、驚いた顔の主人公


未宙『リザが、軍に…?』


管理人『リザの能力が技術研究に必要なんだそうだ』


未宙『そんな……んな勝手な』


管理人『ここは軍が、つまり国の金で成り立ってる施設だ。断れるはずもないさ……


できれば子供達には……』


未宙『――わかったよ』


 ヒロインが機体に乗って操縦してるシーン。髪留めアップ


未宙『あたしは将来軍に行く。絶対あいつを見つけて、絶対に――』




場面チェンジ。七年後。


青空を飛ぶ四機編隊。


バイパー4『しかしいつ見てもでっかいなあーー元軌道エレベーターは。あんなにデカいのにまだ三千キロ以上離れてんだろ?』


バイパー3『今じゃ奴らの巣だけどな――こちらバイパー3。ベイカント、ファイタータイプ三、方位230に目視で確認』


バイパー1『こちらバイパー1。こちらも確認した。総員散開。二機編隊を維持しつつ確実に仕留めろ。いつも通りだ。ここを肉片ひとつ通すな』


散開する機体。戦闘


ニィルドッグ『こちらAWACS ニィルドッグ。ベイカント、ファイター六、コマンダー一現出!!』


バイパー4『多すぎるだろこっちは四機だぞ!』


ニィルドッグ『近場の奴に応援を呼ぶ! 一機づつだ。一機づつ堕とせ!!』


バイパー4『クソっ、食いつかれた――』


 敵機のミサイル。よけるが一歩及ばず撃墜。


 戦闘、追い詰められ一機撃墜。


ニィルドッグ『バイパー4ロスト』


バイパー1『グッ……』


バイパー2『クソっ……間に合わねえ……!』


バイパー1『バイパー2!!』


 通信途絶。


バイパー1『クソ……っ


ノルン『もしもーし、聞こえますかーー? こちらAWACS グレイプニール ノルン・ルーヴで

す』


 高空で停止するグレイプニール。


バイパー1『アァ? ニィルはどうした』


ノルン『現在そちらに応援を向かわせています』


バイパー1『助かる、そちらの戦力は』


ノルン『なのでそれまで持ちこたえて此方が到着次第即時撤退をお願いします』


バイパー1『撤退!? 向こうはまだ――』


 はあ、とため息をつくノルン。


ノルン『せんぱーい、聞こえますかーー?』


未宙『こちら天螺。聞こえてる』


 主人公機。空を切る音。


ノルン『敵機体、ファイター4、コマンダー1。方位285、速度880』


 巨大な砲を持った黒い機体。


未宙『時間がない。敵の情報は』


 前進翼の噴射飛翔翼


ノルン『えとと……』


 機体顔と左肩。ヒロインの髪飾りっぽいマーク


未宙『以降は思考発話で頼む。状況含めて全部アタマに送ってくれ』


 暗いコクピット。うなじにつながる三本のコード。


ノルン『――送りました。えへへ、やっぱりちゃんと言葉に出したいなって思って』


未宙『確認した。また生体パーツが増えてる…あれは腕か?』目をきょろつかせる主人公


ノルン『みたいっすね。サーバーにも送っときます』


未宙『頼む。――視えた』


主観映像。遠くに黒い影


『機体モニタ開始――ちゃんと見てますからね』


未宙『ああ。――あとこれオープンチャンネルだぞ』


ノルン『あっ』


未宙『マスターアームオン。機体制御をフライトからファイターに』


 主観映像に情報が増える。リザが映る。未宙の手に重なるヒロインの手。


リザ『いこう、未宙』


未宙『ああ。――やるぞ』


バイパー1とバイパー3。


バイパー3『隊長!』


バイパー1『危なかったな、応援が来るまで――』


バイパー3『隊長!!』


背後に敵機。


バイパー1『ステルス!? 宇宙人どもッ』


射撃。ブースターで反動を相殺。大気が揺れる。


瞬間敵機が爆散。


バイパー1『何』


未宙『こちらUN技研、未宙中尉。救援に来た。即時撤退されたし』


バイパー1『技研!? って一機じゃねえか』


 第二射。バイパー3の背後で爆散。


バイパー1『退くぞ』


バイパー3『けど…』


バイパー1『黒の逆さ羽根だ。お前も噂くらい聞いたことあんだろ』


 ミサイルを交わしながら第三射。砲が破損。主観映像。アタッチメント破棄、弾種切り

替え。砲身と安定腕が外れる。


 踊るように敵を撃墜してゆく主人公。


 コクピット内で寄り添う二人はさんで戦闘。


 最後のファイター撃墜、右手の突撃砲放して煙の中ナイフ展開、コマンダーに突き刺し破壊。


バイパー3『マジで一機でやりやがった――』


バイパー1『さっさと帰るぞ、燃料が持たん』




ノルン『――状況終了、お疲れ様っす、先輩』


リザ『お疲れ様、未宙』


未宙『ああ、そっちもお疲れ様』


ノルン『あたしは休眠に入りますけど……』


未宙『あたしはもう少し起きてるよ』


リザ『起きてるだけでも脳への負担は』


未宙『いい。もう少し、起きてられる間は、リザを感じていたい』


リザ『――そう』


未宙『今日は何の話をしようか――』


 暗転




ドック収容、挨拶をして終了処理


未宙『ごめん、今日はここまでみたいだ』


リザ『謝らなくていい。会えるだけで、幸せ、だから』


未宙『――いっそ』


リザ『わたしはこの機体だから。それはだめ。』


未宙『……』


リザ『ごめんね、今日は未宙と会えてよかった。……また、ね』


未宙『ああ、おやすみ、リザ』



 暗転とともにコクピットハッチ解放。霞む視界。


 接続針を抜いて外に出て倒れる。駆け寄るスタッフ。


ノルン『寝てるだけっすよ…医務室に運ぶんで伝えといてください』




機内モニタリング中の整備士


A『またなんか話してましたよ、あのパイロット。本当は触れられるはずもないのに――』


B『覗きとは趣味が悪いな』


A『仕事ですからね』


B『クレイドルの亡霊、か』


A『戦死した第一世代クレイドル最上の適合者の模倣人格が機体コンピュータで保存されていた――なんてこと、あるんすかね』


B『実際あるんだから仕方ないだろ。確かにレスポンスもあるんだし。しかし第一世代なんて負の遺産をまだ使ってるなんてな』


A『だから技研持ちなんすけどね……』


A『……生きてたらその子、18くらいでしたっけ。世界が戦場の空だけなんて、窮屈すぎますよ』


B『限りなく似ていてもそいつはただの模倣されたデータだ。あんまり肩入れしすぎるな。っと、司令に聞かれたらたいへんだ』


A『あ、ちょっとどこいくんすかー』





 目を覚ます主人公


未宙『また、やっちまったか』


ノルン『ほんと、寝るなら床じゃなくてベッドにお願いしたいっす』


未宙『運んでくれたんだな』


ノルン『先輩見た目の割りに軽いっすからね』


未宙『そんなこと――そうかもな』


ノルン『――もう』


未宙『ありがとう』


ノルン『当然っす。先輩は、あたしのたったひとりの戦友なんすから』


未宙『ああ』



 二度目の出撃。サイレンと走り回る隊員たちの中を逆行する主人公と後輩。


 無重力区画。


上官『作戦を伝える』


 本日1400に奴らに動きがあった。例のごとく旧軌道エレベーターから解読不能な通信を飛ばしながら48体のベイカントがこちらに向けて進行中。現在第一迎撃隊が出撃中、会敵予想は1445。近くの洋上基地に応援も呼びかけているが、まあ要するに、だ。


未宙『暴れてこい、ってことですね』


上官『話が早くて助かる。その通りだ。グレイプニールにはフェアリィの使用を許可する。先に空に上がって戦域状況を解析、戦闘データを回収してこい』



機体に乗る主人公。接続、現れるヒロイン。


リザ『おはよう』


未宙『ああ、おはよう。――また、闘いで、ごめん』


リザ『ううん、未宙と会えるなら、大丈夫。私は、戦わなきゃ、ここにいられないから』


未宙『ごめん――』


手を握る二人、


ハッチ解放、発射台展開、仰角修正、


未宙『大丈夫。二人なら』


出撃、砲口から出て第一噴射、ヴェイパーコーン発生。




一体撃破する主人公機。


モブ兵『すごいな、あの黒いの……もう15体はやってるぜ』


モブ兵『動きおかしいだろ……普通のセヴンスの機動じゃねえ』


モブ兵『あと十体だ、数で押せるぞ』


モブ兵『待て、何かく』


モブ兵『おいどうした! AWACS応答しろ!』


堕とされたってのか!?


おいふざけ――


何があった!? 何が来てやがる!!


ノルン『こちらグレイプニール、ニィルドッグから管制を引き継ぎます。現在戦域に新たに一機のボギー現出。速度2700。依然速度落とさず戦域内を蛇行しながらこちらに向かっています』


未宙『あたしたちが行く。グレイプニールは他の機体を誘導して残りのベイカントを頼む』


ノルン『了解しました――ご武運を』


未宙『ああ。行こう、――  ?』


リザ『あ、か……』


前方に浮遊する紅い人型機体


未宙『セブンス……? いや、違う――』


飛び掛かる紅い機体


未宙『ベイカントだ……やるぞ――』


リザが堕とされたときの過去の記憶。


未宙『あいつか……!』


戦闘。


怯えるリザ


未宙『大丈夫だ――』


被弾、


未宙『あたしがいる。姿勢制御だけ頼めるか』


リザ頷く。


未宙『よし。あたしの翼は任せる』


近接格闘戦。


右腕が飛ばされる。


痛覚フィードバックと遮断


未宙『まだだ―』


左足被弾、全損


リザ『やめて』


未宙『あいつに――』


リザ『未宙が死んだら、わたし――』


未宙『届かせる』


左の突撃砲を投擲、それを撃つ天螺。弾が当たり爆発。煙の中から右脚の蹴り。バーニア

を吹かせて敵機右腕と翼を溶断。しかし負荷で右足破損、バランスを崩したところをカウンターで頭部が破壊される。


リザ『未宙!!』


ノルン『先輩ッ!!!』


落ちてゆく主人公機をグレイプニールのUAVが受け止める。機体サブモニターに映るグレイプニール

の後ろ姿。


未宙『リザ――』


頭部損傷の衝撃で意識が落ちる主人公


ノルン『やらせない。あたしの名前を呼んでくれなくても、あたしは先輩の二番機だ!』


オープンチャンネルの咆哮。それを聴いた紅い機体は一瞬すくみ数秒見つめ撤退。

残ったベイカントも隊列を組んで撤退してゆく。


操縦桿を握る手が震える後輩。涙が落ちて暗転




暗い森の中の川に漂う未宙――オフィーリアみたいなの


過去回想:連れてこられた幼少期のヒロインに幼少期の主人公が手を差し伸べる。


未宙『こっちこいよ』


……


未宙『一緒にあそぼうぜ』


……


黙って隣に座る未宙


リザ『いなくなると、かなしいから、わたしはだれともつながらない。みんな、いなくなった。みんな……』


手を握る未宙


未宙『ならあたしがいっしょにいてやる。あたしが勝手につながっててやる』


打ち解けていくリザ。3かっとくらい


成長、夜の窓辺、寄り添うふたり。




目を覚ます未宙。真っ白な部屋。


ノルンが気付く


ノルン『先輩ッ!!』


未宙『ずっと、いてくれたんだな』


ノルン『もう起きないかと思ったんすよ……』


未宙『どのくらい、寝てた』


ノルン『一週間、ほど――』


未宙『そうか。あの時、助けてくれてありがとうな』


ノルン『――当然っすよ』


未宙『二人とも生きてるってことは――』


ノルン『はい。フェンリル――あの赤いセヴンスはあのあとすぐ撤退しました』


立ち上がる未宙


ノルン『先輩――?』


未宙『ドックへ行く』


ノルン『先輩まだ安静にしてないと』


未宙『リザに会いたいんだ――無茶、させちゃったしさ』


ノルン『――しょうがないっすね、本当』


未宙『ありがとう』


ドックへ向かう。


修復中の機体。


『リザ――』




上官『作戦を伝える。本日0000、ベイカントに大規模な動きがあった。ベイカントが次々と旧軌道エレベーター周辺に出現している。そのうち数十機は哨戒軌道で我々八洲基地に向け進行中だ。先日のアマツミと紅い機体――以降フェンリルと呼称する。その二機の戦闘以降明らかに奴らの矛先が我々八洲基地に向きつつある。しかも今回の規模は洒落にならん。数千単位の超大規模攻勢だ』

  『勿論各国洋上基地からも総力を挙げた応援が来る。そしてこのことに最高評議会が痺れを切らした』

  『前々から奴らに生体パーツが増えているのは知っているな。つまり上は人型ベイカント――オールド・レッドが生まれるのを恐れている。』

  『ベイカントがあのフェンリルのように人の姿を得る前に軌道エレベーターを叩き潰すつもりだ。UAV グングニールを戦闘空域遥か高空に世界中からあるだけの数全部を弾道飛行させて無理矢理押し殺すらしい。我々はそのおとりだ。』


ノルン『無茶苦茶だ……』


上官『だがやらなければどちらにせよこの基地も、後ろの本土も危うい。アマツミは遊撃を担当、フェンリルが出現次第抑え込め。グレイプニールはアマツミの管制とともにフェアリィで援護しろ。アレはアマツミの機動でなければ抑えられん。やれるか』


未宙『――やります』


上官『作戦開始時刻は追って伝える。解散』





ノルン『先輩、もうすぐ出撃ですよ』


未宙『ノルン、ごめん、ちょっと考えごとしてた』


ノルン『差し支えなければ、お聞きしてもいいですか』


未宙『あたしは、なんで飛ぶんだろう、って』


ノルン『はい』


未宙『小さいころから、空を飛びたかった。施設の低い天井や、偽物の景色じゃない空を飛びたかった。ただ、自由になりたくて』

  『けど、リザがいなくなって、リザを追いかけるために軍に入って。こんな形だけど、リザにまた会えて――』

  『フェンリルに、負けて』


ノルン『答えは、でましたか』


未宙『あたしは、ただ、リザと一緒に居たいんだ。答えは最初から出てたんだ』


ノルン『――わかりました。  実はこの前  さんと会ったんです』


未宙『!?』


収容後主人公が運び出された後のコクピットに滑り込むノルン


ノルン『あたしの先輩になにさせてんだ、って文句言おうと思って。けどつながった途端、すごいいっぱいの感情があふれてて――この子はとんでもなく先輩のことを大切に思ってるんだって。それだけじゃなくていっぱいの思いが、先輩への思いであふれてて


現実時間へ)――あーあたしなにいってんだろ……つまり、です』


   『会いに行ってあげてください。先輩の、一番大事なひとに』


未宙『――ありがとう』


ノルン『あたしは先に空に上がります。けど忘れないでください』


主人公を抱きしめようとしてやめる後輩


ノルン『先輩がどこに行っても、あたしがちゃんと見てますから』


挨拶して出ていく後輩。




目を開ける主人公


未宙『――よし』


整備班長『アマツミ弐型だ。前の機体の神経系をベースに機体全体の出力を30%向上させた。あとは兵装も色々積ませてある文字通りの決戦し――まあいい。乗ればわかる。早く御姫様を目覚めさせて来い』


未宙『はい』


整備班長『ああ、あとこれ、俺たちからの餞別だ』


デバイスを放り投げる整備班長




コクピット内。


未宙『おはよう』


新衣装のリザ。


リザ『未宙……』


未宙『――似合ってる』


リザ『……』


未宙『この作戦が終わったら、ふたりで一緒に旅行しよう』


リザ『え…』


未宙『これ、機体と接続したら  の目になってくれるらしい。中から文字も打てるんだってさ。なんかベイカントや他の国のネットワークがなんやかんやで艦内ネットワークでしか繋げられないらしいけど……洋上基地もすっげー広いからさ、だから――』


抱き着くリザ。


リザ『未宙っ!』


未宙『どうした?』


リザ『もう、一緒に飛べないかもって思ってたから』


未宙『約束したろ? 勝手に繋がっててやるって』


  『――行くか?』


リザ『うん。ふたりで』


未宙『じゃあ、決まりだな。――二人で生きよう』


リザ『うん。二人で』


出撃ハッチ。


未宙『未宙、リザ。アマツミ弐型、出ます』二人でスロットルレバーを押し込む


戦闘空域。戦闘。


ノルン『グングニール弾着まであと――』


アラート。


未宙『来た』


ノルン『先輩、ご無事で』


未宙『ああ。行ってくる』


戦闘開始。


戦闘


グングニールが頭上を通過。それに反応してフェンリルが上空へ。


多数のベイカントが上空へ。壁をつくりグングニールを防ぐ。


管制室『グングニール、全機命中せず』


再度戦闘へ。


未宙『まだ、足りない――』


まだ、遅い――


もっと、深く――


もっと――!!






真っ白な空間。


未宙『ここは――』


リザ『未宙――』


涙目のヒロイン


(カット)【『第一世代クレイドルの最後の場所。並列処理する6基のコンピューターの情報を統合処理、最終意思決定するパイロットの脳から、意識という最終意思決定機能をコンピューター側に与える場所』

『それをすると、どうなるんだ』

『……端的に言うと、わたしと同じになる』】


リザ『きちゃ、だめ』


足を踏み出す主人公


リザ『来ちゃだめだよ』


なおも足を止めない主人公


リザ『未宙!』


ヒロインを抱きしめる主人公。


未宙『あったかい。リザの温度だ』


リザ『だめだよ……私は、選ばれちゃいけないの。私は、私じゃないから。未宙が受け容れてくれた私じゃないから。未宙が好きって言ってくれた私じゃないから』


未宙『それでもいい』

  『やっと、こうしてリザを感じられる。触れられる。ずっと、ずっと会いたかったんだ。ずっと一緒にいたいんだ。だからこれからもずっと一緒がいいし、ずっと離さない。――だから』


リザ『もう、もどれないよ』


未宙『分かってる』


未宙『――リザ』

  『大好きだ』




手を取る二人


リザ『どこにいくの?』


未宙『わからない、わからないけど、これを終わらせたら、いろんなところに行こう。空よりも自由で、誰もいったことのないとこまで、ふたりで』


リザ『あてのない旅、か』


未宙『――それもいいだろ?』


リザ『うん、未宙と一緒なら――』


機体の目が赤から青に輝きを変える。

超機動。弧を描く軌道からゲッター機動みたいな感じになる。



一般パイロット『こちらグリフィス1、ベイカントの様子がおかしい』

空中で静止をするベイカント。静止機体数は増えていく。


司令『グレイプニール、状況を知らせ』


ノルン『こちらグレイプニール……ッ!?』


司令『どうした』


ノルン『機体が操作を受け付けません。空中に静止したままうごかない!』


オペレーター『各機からも同様の報告を受けています』


オペレーター『ドックで整備中の天雷が複数起動!カタパルトに移動しています!』


司令『誰が乗ってる!?』


オペレーター『無人です!! 各国基地からも同様の報告多数!!』出撃していく天雷たち。


オペレーター『本部コンピュータにアクセス要請! これは――アマツミからです!』


司令『まさか――アクセス承認、解析を急げ!』


オペレーター『これは――グレイプニールを起点にして戦闘演算に他の機体のコンピュータも使って並列処理している……!?』


オペレーター『フェンリルも同じことをしていると考えると――』


司令『コンピュータは多いほうがいい。しかし』


オペレーター『そんな出鱈目、パイロットの脳が耐えられるとは――っ!』


グレイプニールのコクピット内で操縦桿を動かす後輩。ふと感じる未宙の気配。


ノルン『先輩……?』



    いっちゃだめだ、先輩!!!!』




軌道エレベーターが見えてくる。


操縦桿から手が滑り落ちる。首輪からリードが外れる。


フェンリル反転、最後の一戦


スラスターを更に吹かす。機体の黒い塗装が溶け銀色になってゆく


最後の10秒




両腕武装を使い果たし手でフェンリルの顔をつかみ軌道エレベーターの壁を破る。大広間へ。


広い空間に着地。なにかの声を発するフェンリル。それを聞き届けて下腕のパイルバンカーでとどめ。


フェンリルの絶命を見届けて直上へゆっくり飛んでいく。


巨大な紅い曹のなかに赤い髪の少女


機体主観映像。ネットワーク接続、データ送信のダイアログ。


機体が手を差し伸べると曹が壊れ中の赤ん坊がアマツミの手に。


再び上昇してゆくアマツミ。そして天雷が軌道エレベーターに特攻、爆発。崩れ落ちてゆく軌道エレベーター。


モブ兵『軌道エレベーターが、折れた――』


モブ兵『おい、ベイカントが撤退していくぞ』


モブ兵『機体が動く! ――あれ?』


モブ兵『どうした』


モブ兵『IFFの故障か? あいつらが友軍機扱いになってる』


グレイプニールコクピット内。俯くノルン


ノルン『先輩――』


『グレイプニール、状況報せ、グレイプニール!』


ノルン『軌道エレベーターの破壊及び、ベイカント全機の撤退を確認』


   『作戦終了。これより帰投します』



――三年後


ノルンの語り


ノルン『三年前のあの日。人類が、空の自由を再び手にした日。先輩はかえってこなかった』


帰還したアマツミ。からのコクピットに赤髪の少女。


ノルン『彼女たちはどこへ行ったのか。それは彼女たちにしか分からないことだけれど。きっと私たちが誰もいったことのないところへ行ったのだろう』


洋上基地上、少し髪の伸びた後輩。


ノルン『ベイカントは統率を失い、何かを求めるように地球の空を飛んでいる。何者とも交わらず、ただ、空を飛び続けている』

   『何故私が今ここにいるのか、はっきりとした答えは出せないけれど、私は、空を飛び続ける』


ノルン『リコ(アマツミが連れ帰った少女)、行くよー』


紅い目のアップ。


リコ『はーい!』


ノルン『その先に先輩がいるような、そんな気がするから』


青空に三本の航跡雲、タイトルが出て終幕。

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