Vapor Trail
比良坂 新
設定
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はじめに
本作は筆者が制作した個人制作百合SFロボットアニメ『Vapor Trail』の脚本を小説の体裁にしたものです。
こちらではアニメのほうで描ききれなかった部分を含めアニメ本編を第一部として最後まで執筆、続編も第二部という形でこちらで連載してゆく予定です。
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本作の用語の設定を書き連ねています。草案のものをそのまま持ってきているので本編と記述が微妙に違うものがあるかもしれません。別に読まなくても大丈夫です。その場合は本編やTwitter準拠でお願いします。
7's(セヴンス)
第七世代戦闘機の俗称。四肢と背部の翼が特徴。戦闘機の流れを汲んだ兵器であるが前世代と大きく異なる構造とパイロットが7つ目のコンピュータとなるその制御系からこの通称が使われる。また四肢と胴体、頭に加えて7つめの器官である翼の意味も込められている
2079年のオールド・レッド(後述)との邂逅、軌道エレベーター占領以後観測されるようになった敵性飛行体ベイカント(後述)に対し人類の航空戦力は敗北を続けた。DDL(これも後述)の発見によりG負荷の枷が取り払われつつあったが異常な機動をものともせず、ミサイルを無力化する彼らとの戦闘は、機銃とロケット弾数発程度しか装備できず機体を一方向への推進力と数個の動翼のみで制御するしかない既存戦闘機では限界があった。
これに対し戦闘機はステルスの時代から再び火力と機動性の時代へ突入する。可動式の機銃を多数搭載し火力に特化した空飛ぶ戦車とも呼ばれた第5.5世代戦闘機である。しかし機動性に難があり近接格闘戦で太刀打ちできないため同時期に開発されていた機動性重視のモデルが第6世代戦闘機として実戦配備。だがその双方ともベイカントに対し決定的な一打を与えることはできず人類は消耗戦を強いられていた。
ここで提唱されたのが人型戦闘機理論である。その名の通り既存の戦闘機と重機として使用されていた多目的人型機械を元に空中戦闘機動が可能な人型の兵器を作るという計画。四肢を使った重心移動と全身に搭載されたバーニア制御による変則的な空中機動、腕と脚が追加されることにより広がった攻撃可能範囲と武装マウントの増加、多様性。そして何より人型であることにより生まれた戦術の自由度。DDL実用化の後押しもあり関節強度も確保され、開発は順調に進んだ。
しかしこれらを可能とするにために、まず操縦の複雑化という最も大きな壁にぶつかる。それを改善する為に開発されたのがクレイドルシステム(後述)である。紆余曲折を経ることとなるが結果として操縦面の問題は解決。多少の燃費の悪さはあるものの最終的に人型素体に大型噴射飛翔翼を備えた形状に落ち着いた。
2084年に完成した完全な新機軸の兵器。全く新しい操縦方法にパイロットは戸惑い、育成も難航したがセヴンスの初投入以降、人類は圧勝とは言わずとも善戦を続け太平洋上の各国環状基地群によって侵攻を抑え込むことに成功している。現在は第三世代が主に使用されており、第四世代の開発も進んでいる。
オールド・レッド
世界大戦の終息後、国連主導で世界平和の象徴として開発が行われ2079年に完成した国際軌道エレベーター完成記念式典の日、宇宙空間に突如現れた巨大オブジェクト。
全長約500m、深紅の外殻に歪な四肢と翼を持った形状をしている。出現当初は軌道エレベーター周辺を周回するだけだったが防衛システムによる攻撃を受けた途端攻撃を始め一夜にして軌道エレベーターを占領、彼らの巣となった。以降一度も姿を現していない。
ベイカント
オールド・レッドによる軌道エレベーター占領後、そこから襲来する敵性飛行体。赤い外殻を持ち、ファイタータイプとコマンダータイプの二種類が確認されている。
体組成は不明、体内は空洞でありそこに充填した気化DDLを体内で爆発させ推進力を得ている。名はvacant…空っぽという意味から。
出現時には軌道エレベーターから音波のようなものが発されており、それによって彼らを統制していると考えられる。ヒトの可聴域でも確認可能。何かしらの歌のようにも聞こえる。
25mm機関砲で十分に抜ける装甲であるがマッハ2を記録した巡行速度、Gによる負荷をものともしない機動性ともに常軌を逸しており、その上人類側の誘導ミサイルの信管が反応しないため対応はドッグファイトのみとなり既存戦闘機は苦戦を強いられた。
攻撃方法は彼らの外殻と同素材の弾丸を用いた機銃と体当たりによる自爆攻撃。
セヴンスの完成により人類が主導権を握り始めた2085年初頭からは疑似的なミサイルのようなものも使用をはじめ、また2090年以降は人体を模したパーツを携えた個体も確認されている。
軌道エレベーターを占領した巨大オブジェクトをオールド・レッド(原初の赤)と呼称するのは彼らの持つ外殻が同じ赤であるため。
DDL(Different Dimension inclusion Liquid)
第三次世界大戦終結後の2072年、プレート運動の研究のためマントル付近の地殻を掘削していた際に偶然発見された紫色の粘性を持った半透明の液体。外界から加わるあらゆる力を吸収する性質を持つ。加わるあらゆる力を遮断するため四方をそれで囲めば無重力空間を作ることも可能。しかし2点から力を加えれば切断ができ、1点に力をゆっくりと加えれば貫通することも可能。密閉容器での保管が可能だが外気成分と化合(化合する物質は複数存在。ただし最も反応が大きいのは酸素である)することで全ての機能を失いただの液体となる。ダイラタンシー流体のようなものと考えられていたが組成は既存物質とは全く異なるものであったため詳細は不明。
研究の結果『13次元を内包』し、外部からの衝撃を全て液体の内側に存在する別次元へと送っている文字通りの超次元物質であることが判明した。
2074年、戦闘機のコクピット周りに注入することで(コクピットと機体の接続部等で完全ではないが)パイロットにかかるGを大幅に軽減することに成功。これによりハイGターンの限界が更新され、セヴンスの開発に大きく貢献。またパイロットに求められる肉体的資質が大きく緩和された。
またこの素材の応用によりVMSも開発された。
解明されていないものも多数あるが作中舞台となる2099年現在でも多くのパイロットが空で戦うための助けとなっている。
2078年のベイカント襲来以降各国での産出量が劇的に増加した。
VMS
vanishing missile chaff system
13次元を内包するDDLを機体各部から噴射、覆うことで数瞬の間機体を『存在しない』ものとしベイカントのミサイルの近接信管を無効化する。ただしDDLは貴重資源であるため使用回数は限られており、気休め程度のものであることは否めない。
クレイドルシステム
人と同じ四肢を持ち、そして翼を携えた新兵器は既存の操縦体系とは大きく異なり、非常に複雑な操作が要求された。それを解決するべく開発されたのがクレイドル(揺籃)システムである。首筋にリードと呼ばれるコードを接続、機体に積まれた6基のコンピューターで情報と演算の処理を行い、パイロットの脳が最終意思決定を下す。脳を拡張、機体と一体化するシステムと言えば分かりやすいだろうか。
これによりパイロットは機体との接続中、機体や周辺環境、友軍及び敵軍等の戦術情報を全て『既存知識として』理解し、自分の体を動かすよう直感的に機体を動かすことができるようになる。感覚共有とは違うものだが被弾時には自分の体の一部が損壊した情報が伝わるため疑似的な痛みのようなものを感じる場合がある。
処理する情報量が非常に多く、またシステムの性質上脳への負荷が非常に強いため実装できるパイロットも数が限られていた。
これに対し第二世代クレイドルシステムが発案、開発される。コクピット内に戦闘に必要な情報、映像を表示、脳機能の拡張領域を減らし機体コンピュータに各部の行動をラーニングさせ、それを操縦桿とフットペダルで制御する方式をとったことで負荷を軽減。機動においてはそれぞれの動きに対しシステムが最適化された動きをするようプログラムされている。第一世代の自由度こそ損なわれたものの実装可能なパイロットの数が劇的に増加。それにチューニングを加え更に扱いやすくなった第三世代クレイドルシステムが現行機の標準装備となっている。
だが第一世代の負荷を完全にねじ伏せ、文字通り機体と一体となったパイロットは少数であれど存在していた。人類防衛戦線において大きな活躍を見せた伝説的パイロット達であったが多くの者はその素性を知らず、表立って存在するどの部隊にも所属しない最強の機体がある、といった噂がある程度であった。第二世代の完成から数年後のベイカント2度目の大規模侵攻防衛戦以降、彼らが空を翔ける姿を見たものはいない。
システムの進化に合わせて機体のコンセプトも見直されており、このシステムの歴史はセヴンスの歴史であると言える。
八洲/八洲軍
未宙やリザ、ノルンが籍を置く国及び軍隊。ベイカントが現れた翌年の2080年に日本の自衛隊がクーデターを起こし千葉県沖四十キロの地点に人工島を建設することで生まれた軍事国家——という建前の実質的日本軍。
第三次世界大戦当時、日本は他国に対する一切の戦闘行為への加担を拒否。武器の生産のみを行っていた。2079年、ベイカントの襲来があり制空権を奪われた日本は他国からの圧力もあり防衛戦力のみならず反撃を行う戦力を持つ必要があった。
だが相手が人類ではない敵性飛行体であっても、国民からの反発は大きかった。結果、日本から半ば無理矢理に独立という形で八洲を建国した。領土は人工島、主権は軍、所属の軍人(元自衛官)を国民と定めている。
日本とは同盟を結び、八洲と日本の貨幣は同一の円。二国間においてのみ多重国籍を認めている。
太平洋環状基地群
対ベイカント戦の前線基地。ベイカントの巣である旧軌道エレベーターを中心に太平洋沿岸諸国が主導で建造した洋上基地を円環状に配置したもの。
基地は巨大な円筒形をしており上部のみが海上に露出している。内部は居住区とセヴンス等の整備区、各種研究機関や指揮所のみならず訓練施設や簡易な娯楽施設、託児所や孤児院も併設されている。
ただし本国から物品が届くのは遅い。
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