1-5 飛翔
サイレンが鳴っている。未宙は重力遮断ブロック第四セクター、特殊技術研究部のドックへ向かう。
数人の整備員と軽く挨拶を交わし機体へ乗り込む。クレイドルシステム起動、機体と接続する。右膝部に違和感を感じたが許容範囲内だ。
クレイドルの接続深度を上げプリフライトチェックを行う。電装系、可動部異常なし。視界を機体メインカメラと接続する。視点が高くなった。整備員たちがやけに小さく感じる。各種バランサーの最終調整。機体がエレベーターへと移動してゆく。
「おはよう、リザ」
『おはよう、未宙』
いつもの挨拶。リザの存在を感じる。戦いに赴く前だというのに、未宙にとっては唯一の安心する時間だった。
エレベーターへと移動する間、機体に各種武装が装備される。作戦によって兵装は変わるが、
機体を移動させるための大型エレベーターと天螺の脚部が固定され、垂直に上昇してゆく。
戦域情報を受け取る。作戦内容は敵ベイカントの迎撃、及び殲滅。いつも通りだ。今回は第五飛行戦隊六機と先日打撃を受けた第七飛行戦隊の生き残りとともに出撃、とあったが天螺はGleipnirの監視下であれば独断専行が許可されているため、事実上の遊撃部隊であった。
エレベーターの壁面の構造が変化する。機体は地上ではなく、八洲基地地下第三層から地上を斜めに貫く全長七百メートルの巨大な四角柱、
脚部の固定ロックボルトが外れ、頭部周辺のハードポイントに
機体ジェネレータ起動。右側からエンジンスタート、吸気開始。内圧上昇、エンジンの回転数が上がってゆく。全身にエネルギーが満ちていくのを感じる。まるで血が通ってゆくようだ。
機体最終チェック完了。機体情報を管制室に送る。発艦許可。
「行こう、リザ。二人で」
『うん、二人で』
未宙はリザの手を握る。感触はなくとも、温もりはなくとも、確かにそこにいるという確信がある。今は、それでよかった。
出力最大。発進。カタパルトが火花を散らす。強制的に加速された
黒い鳥が、曇天を切り裂いてゆく。
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