1‐4 閑話

 目が覚める。頭が痛い。少し前のことを夢に見ていた気がする。極度の疲労感が全身を支配していた。体を無理矢理起こす。ここはどこだ、と周囲を見回す。


「起きましたか、先輩」


 ノルンがいた。真っ白な部屋。白いシーツに白いカーテン。ここは恐らく軍の医務室だ。


「運んで、くれたんだな」


「先輩見た目より軽いっすからね」


「そんなこと……そうかもな」


 自分が笑っているのがわかる。


「また、やっちまったな」


「ほんと、寝るならベッドの上で寝てもらいたいっす」


 未宙がこうして機体を降りてすぐ昏倒するのは初めてではなかった。脳を極度に酷使するクレイドル1を用いて戦闘行動を行い、帰投までの時間も全て機体と接続したままでいたのだ。機体を降りるまで意識が持つこと自体異例なのだ。だが未宙は眠らなかった。機体に乗っている間は、リザとともにいられるから。彼女にとって天螺に乗っている時間は、即ちリザとともに居られる時間であった。


「――ありがとう」


 そして、昏倒した未宙をベッドまで連れていくのは、いつもノルンだった。


 ノルンが一瞬、少し赤くなる。すぐに頭を振って、いつもの気の抜けた彼女に戻る。


「当たり前っすよ。だってあたしは先輩のたった一人の戦友なんすから」


 拳を差し出すノルン。未宙が応える。拳が触れる音が、病室に小さくこだました。

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