1‐4 閑話
目が覚める。頭が痛い。少し前のことを夢に見ていた気がする。極度の疲労感が全身を支配していた。体を無理矢理起こす。ここはどこだ、と周囲を見回す。
「起きましたか、先輩」
ノルンがいた。真っ白な部屋。白いシーツに白いカーテン。ここは恐らく軍の医務室だ。
「運んで、くれたんだな」
「先輩見た目より軽いっすからね」
「そんなこと……そうかもな」
自分が笑っているのがわかる。
「また、やっちまったな」
「ほんと、寝るならベッドの上で寝てもらいたいっす」
未宙がこうして機体を降りてすぐ昏倒するのは初めてではなかった。脳を極度に酷使するクレイドル1を用いて戦闘行動を行い、帰投までの時間も全て機体と接続したままでいたのだ。機体を降りるまで意識が持つこと自体異例なのだ。だが未宙は眠らなかった。機体に乗っている間は、リザとともにいられるから。彼女にとって天螺に乗っている時間は、即ちリザとともに居られる時間であった。
「――ありがとう」
そして、昏倒した未宙をベッドまで連れていくのは、いつもノルンだった。
ノルンが一瞬、少し赤くなる。すぐに頭を振って、いつもの気の抜けた彼女に戻る。
「当たり前っすよ。だってあたしは先輩のたった一人の戦友なんすから」
拳を差し出すノルン。未宙が応える。拳が触れる音が、病室に小さくこだました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます