さしも知らじな 6
「いや。こっちの橋から向こうに渡って。少し歩くんですケドォ……」
不満そうな祐志に、俺の声も小さくなっていく。
「あっちも、人だかりあるじゃん」
「ま、ね。あれを突っ切るのに苦労する……かなぁ?」
「げーッ」
祐志が夜空を仰いだのと同時にどよめきが広がり、ヒュゥーッと天を切り裂く鋭い音と共に、ドドーッンと1発目の花火が上がった。
花火の音に負けないくらい大きな歓声と、盛大な拍手。
なんだかはしゃぎたくなる程、胸がドキドキする。
それからは、街灯なんて足元にも及ばない程の光が、何度も暗い夜空へと上がっては、地上へと降り注いだ。
これでもか、これでもか、と上がっていく。
「すげぇ……」
俺の呟きに軽く頷いて、祐志も花火に目を向ける。
花火を見遣りながら橋を渡っていた祐志は、その中程で突然足を止めた。人波を抜けるように逸れると、欄干に片手を置いて花火を見つめる。
「……ここだと、見えなくはないけど、ちゃんと見えないぜ」
「ああ」
そう言いながらも、祐志の足は動く気配がない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます