さしも知らじな 5
バカだろ、お前。と、笑った瞳が言っている。それはいつもの祐志で、いつも俺の隣にいる時の祐志で、俺はくすぐったい気持ちで切り返した。
「じゃなくて、家からとか他の場所からで も、ここの花火見た事ねぇの?」
「家からは、見えねぇなぁ。――でも、そういや中学ん時。先輩ん家の窓から、みんなで見た憶えがある」
祐志が少し夜空を見上げながら、懐かしそうに微笑む。そこで会話は、終わってしまった。
今のは、俺が悪い。
祐志の中学時代の話が出ると、つい黙り込んでしまう。その頃の仲間と比べられてる気がして、あの頃の方がよかったと、そう思われてる気がして……。いつも言いようのない苛立ちに支配されてしまう。
住宅街を抜けて川に出ると、街灯が減って結構暗く感じた。それでも花火が上がる辺りの土手はもうかなりの人込みで、隣で祐志の顔がしかめられる気配がした。
「もしかして、あの人だかりの中に行くのか?」
うんざりとした口調で祐志が指を差す。
睨むように目を細めて人込みを見つめる祐志に、俺は慌てて目の前の橋を指差した。
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