しづこころなく 18

 込み上げる笑いを我慢せず、弘人へと向けてやる。それに一瞬目を瞠った弘人は、


「しょーがねぇじゃん。こーゆーふうに育てられたんだもん」


 姉貴に、と言葉を足して少し笑った。


「でも俺、結構気に入ってんだ。自分のこの性格」


「へぇ」


「気ィ遣わなくていい奴が、今は1人いるけど」


 驚いた視線を向ける。だがそれには気付かず、弘人は桜を見つめたまま、ぼんやりと口を開いた。


「俺は今までさぁー、周りの奴等の事『不器用だなー』って思ってたんだ。――例えば。プレゼントや土産もらったらすぐ開ける。身につけれるモンならその場で身につける。モノ食いに行ってそこで相手の『おすすめ』があったら、それを食って美味いって褒める。そんなちょっとしたした事で喜んでくれる奴は結構多いよ。でも、そんなちょっとした、俺にとっては『普通の事』が出来ない奴も、実は結構多い」


「だろうな」


 だって、俺には絶対無理だし。


 何気に言うと、一瞬弘人は恨めしげな瞳を俺に向けた。そしてすぐ、再び桜へと視線を戻してしまう。

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