しづこころなく 17

「だからぁー。どっちも喜ぶけど、喜ぶ観点が違うの! 他のヤツのは、俺の感覚では綺麗じゃなくても、 綺麗さに感動してる振りして喜ぶ。『呼んでくれてありがとう~』って意味を込めて。お前の場合は『俺を選んでくれたのが嬉しい』っつーか……」


「で、『呼んでくれてありがとう』なんだろ?」


「そう」


「……一緒じゃん」


「全っ然違う! 解んないならもういいよバカッ」


 焦れて怒りだす弘人に、俺は呆れた声で切り返した。


「お前がバカ?」


「そっちだろ」


 ぶぅーと頬を膨らます弘人に、なんだか笑いが込み上げてくる。こいつの言いたい事全部はやはり解らな いが、いくつか嬉しい言葉を聞いた気がするから、その言いたい『何か』は、確かに俺へと伝わってきているのだろう。


 その1つ1つはきっと、今散ってる花びら程の小ささに違いない。


 だがそれらを全部掻き集めると、こんなふうに立派な樹にだって、姿を変えるのだろうか。


 ――ならちょっと、感動するかもしんねぇ。


「そんなに他人に気を遣ってて、しんどくねぇ?」

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