もろともに 5

 すっげぇ嬉しい言葉だったのに、なぜか袖を掴んでいる手は固まって、放す事も、ましてや強く掴む事も出来なくなった。


 今って時間……止まってんのか?


「納得したか?」


 フイッと俺の顔を覗き込むように言った祐志が、再び歩き出す。自然に離れた手が、 無意識に後を追った。


「……ところでさぁ、祐志」


 空気だけを虚しく掴んだ手を握りしめて、離れる背中を引き止めるように声をかけ る。


「俺の鞄は?」


 ――俺の声、変じゃねぇよな?


「あ……」


 少し間の抜けた声を出して、祐志が踵を返す。


「忘れてた」


「ええー! そもそもお前、なんで教室に戻ったと思ってんだ」


 ……結局。笑っちまうけど、こんな些細な事がキッカケだ。俺達はまた、普段の調子を取り戻す。


「自分の鞄を取りに」


「俺のもだろ」


「そっちはついで」


 言って横を通り過ぎながら、俺の腕を掴む。そのまま引っ張って階段を上がり始める 祐志に、俺は慌てて声を発した。


「な、なんだよ」


「鞄取りに行くんだろ」

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