1-4 魔剣と剣士
剣を金属で形作られた刃を持つ近接武器と定義すれば、魔剣とはその定義を破壊し尽くしたモノを指す言葉に他ならない。
剣、と一文字。そしてその前に例えば『魔』だとか、『聖』、あるいは『神』や『奇』などの特別な文字を冠したモノが、如何なる経緯によってかこの世界には存在してしまっている。もっとも、そう名付けたのはあくまで人でしかないのだか。
魔剣、聖剣、神剣などと呼ばれる剣の形をした何か――総称する場合は魔剣、あるいは超常の剣と呼ばれる事が多いそれらは、程度の違いこそあれど、現在の技術では再現不可能な現象を引き起こす事ができてしまう。例を上げるとすれば、炎の生成と操作や、身体能力の強化など。そして俺の魔剣『不可断(ものをたつことかなわず)』であれば、その名とは反対にありとあらゆるものを微塵の抵抗もなく切り離す力を持っている。また、基本的にそれらの剣は性質上そもそも剣という形である必要がないものがほとんどだったりもする。
そして、形や用途がどうであれ、そういった超常の剣は兵器としていわゆる普通の剣よりも優れている事は間違いない。ゆえに当然、その力を扱う『剣使』こそが、現在の戦争における主戦力。また当然の流れとして、『剣使』の台頭と共に従来の『剣士』、真っ当に鉄の棒を振り回していた者達は戦場においての役割をほぼ失った。
だから、俺にとって魔剣は敵だ。
剣士の才は無価値と化し、代わりに価値を得た『適性』と呼ばれる剣使としての才、剣の力を引き出す能力なんてモノは俺と欠片も縁がなかった。なんとか扱う事のできる魔剣『不可断』の力も、要するに剣の延長線でしかなく剣使として戦うには不足に過ぎる。
つまり、時代が違えば剣才溢れる大剣士であったはずの俺は、魔剣なんてものがこの世界に存在しているせいで、冴えない伝統芸能の伝承者か『なんでも切る屋』として生きていくしかないわけだ。
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