リライト

@nigerutoriniku

序章

 『幸せ』の本当の価値ってのは自分の手のひらに数えきれないほど乗っている時には気付かず、最後の一つが手のひらからコロッと落ちたことを気づいた時に知る。


「俺ってあの時、『幸せ』だった」


ってな。そして落としたのを探している間は、また新たに出来た小さな幸せに気付かない。で、結局その存在を知るのは落としたあとだ。チャンスの神様といい、この幸せの神様もいい性格をしてやがる。

 でも俺はこれよりもタチが悪いことを知っている。


手のひらに乗っている大事な『幸せ』を自らの手で落とすときの『絶望』だ。


俺の場合は5年前、この世界にいるヒト全てが安堵し喜び素性も知らぬ隣人と抱き合ったその瞬間だった。



―――ある男の手記

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