颯の場合3

 相変わらず上手いな拓磨……。

 5対5の5分間のミニゲームのバスケ。

 俺と拓磨は体育の時合同で同じ時間に体育をやる。


「キャー!2人とも頑張って!」


「なんで、柏木兄弟あんなにカッコイイの?!」


「もうずっと2人の姿見ていたいっ!」


 関係の無いギャラリーが黄色い声で騒ぐ。

 お前ら、自分たちのサッカーはどうしたんだよ。

 今日は昼から急に天候が悪くなり女子が半面体育館を使い、リフティングやドリブルの練習をするはずた。

 それなのに、ネット側の向かうで女子が騒いでいる。

 ……拓磨がいるから余計にギャラリーが多いんだろうな。


「颯、集中切れてるよ」


「しまった!」


 拓磨が素早いドリブルで俺を追い越す。

 そしてそのまま彼はレイアップシュートを決めた。


「きゃー!!拓磨くんかっこいい!」


 女子の歓声が高鳴る中、拓磨は一人でうずうずしたようにいきなり吠え始めた。


「あぁー、ダンクしたいー!」


 体育館に広がった、拓磨の大きくそれでいても柔らかな声は悔しさと楽しさが混ざっているように感じる。男子の体育を見ていた先生が、「柏木、騒ぐなっ!」と叱責をあげる。


「怒られてやんの」


「うっせー。さっきの絶対ダンク出来たし、出来たら気持ちよかったのに」


「お前、ほんとバスケ馬鹿だよな」


「うっせーよ、サッカー馬鹿」


 拓磨と拓磨のチームメイトが何か言い合っている。彼はいつも笑顔だ。誰と居ても空気を読んでその場にあった顔をする。それが、柏木拓磨だ。普通、そんな人間がいたら疑うか、気持ち悪のではないかと思うのだがそれを思わせないのがまた彼の凄いところだ。


「颯っ!」


 チームメイトから速攻のパスが渡される。それを俺は上手く捕まえて相手メンバーから間隔を開けた後、ボールを放つ。


 俺の放ったボールは綺麗な弧を描いてゴールネットを潜った。


「颯ー!!」


「めっちゃすごい!」


 女子の声がまた盛大に騒ぐ。そんなに、騒いで何になるって言うんだ……。

 俺がゴールを決めた後試合終了の合図がなり、ネット越しを見たら女子の体育を見ていた先生が俺たちを見ていた女子達の背後からゾッとするほど不気味な笑顔を浮かべて後ろに立っていた。

 それから女子は堪忍袋の緒が切れた先生から残りの30分間ずっと怒られ続けられていた。


 男子の体育はと言うと拓磨のチームが全勝。俺たちのチームは拓磨がいるチーム以外には全部勝った。


「拓磨、お前のおかげだよサンキュー」


「そんなことないって」


「お前、あんだけシュート決めといてまだ言うかー?」


 拓磨たちのメンバーが嬉しそうに話し合っている。ふざけたりしていて授業終了まじかに先生から大人しくしろ、と怒られていた。


 それでも拓磨たちは楽しそうに笑っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る