第14話




単調な洞窟を

どこまでも進んでいく。



ルーナは

天井や壁の

ヒカリゴケに

興味をそそられたりと忙しい。



何にでも

手を出そうとするため

危なっかしい。


毒はなくても

皮膚がかぶれる可能性もある。


そのため

手を繋いで

ルーナの行動を制限している。




「・・・カミュ」


「ん?」



ずっと

繋いでいる手に

ルーナがチカラを入れてきた。



「ルーナは、『あくまの子』、なの?」


『のろわれた子』なの?



俯いて

震えた声で聞くルーナ。



どちらともなく

足を止めていた。



オレは

膝を折り

ルーナと目の高さをあわせてやる。


「オレには、ルーナは『おバカな子』にしか見えないな」


「ルーナ、『おバカ』じゃないもん!」


ふくれた頬を突っついて

「お子ちゃま」と言ってやる。


「ルーナ、『お子ちゃま』じゃないもん!」

さらにふくれっ面になる。



強く抱きしめてやると

「ルーナが『怖くない』の?」と

聞いていた。




「ルーナ」


人は

『自分より強い相手』を怖がるものだ。


そして

『怖いもの』

『悪いもの』

たとえる。



確かに

『ルーナの中にあるチカラ』は

強いかもしれない。


でも

オレは

ルーナを

『怖い』と思ったことはない。




「オレが『怖がっていない』のに、ルーナは『自分が怖い』のか?」


ルーナの

身体を離して

目線をあわせる。


「ルーナ、のこと・・・『怖くない』?」


「ぜんぜん」


オレの目から視線を外さず

震えながら聞くルーナに

オレは即答する。




「ルーナのこと、ホントに怖くない?」


「ああ。一度も『怖い』と思ったことはない」



ルーナの頭を撫でながら言ってやると

大きな目から

涙がこぼれ出した。



「たとえ、世界中の人がルーナを『怖い』と言っても、オレだけはルーナを『怖い』とは思わない。絶対に」


だから

自分を怖がる必要はないんだ。



言い聞かせるように

ゆっくりと


噛んで含めるように

話してやる。




「怖くない・・・?」


「ああ。怖くない」


「ぜんぜん?」


「ぜんぜん」



今のルーナは

ココロを落ち着かせるために

『確認』をしているだけだ。



「カミュは・・・ずっと一緒にいてくれるの?」


「ああ。一緒にいてやる」


だから安心しろ。



オレの言葉に

何度も頷く

ルーナ。


「心配するな。大丈夫だ」


そう言って

抱き抱えて立ち上がる。




「だから言っただろ。『ルーナはおバカな子』だって」


怖がらなくていい事を

怖がってた『おバカな子』だ。



そう言って笑う

オレに抱きついて


「ルーナ・・・『おバカな子』だもん」


だから置いてっちゃヤだよ、と

小さな声で訴えてきた。



オレは

それに答えず

ルーナの頭を撫でていた。



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