第12話
ルーナが
泣き疲れて眠るまで
オレはずっと
ルーナの
背中を軽く叩いていた。
アイテムボックスから
タオルケットを取り出し
身体に掛けて
横になる。
腕の中で
スヤスヤと寝息をたてている
ルーナの
泣き腫らした目に
回復魔法を掛ける。
回復魔法で
ココロに負ったキズも
『なかったこと』に
出来ればいいのにと思う。
オレは
騎兵たちの会話を思い出した。
『悪魔の子』
『呪われた子』
アレは
ルーナをさした言葉だろう。
今はもう
何も感じないが
あの時
ルーナの中から感じた
強い魔力。
あれが
関係しているのだろうか・・・
人は
『尋常ではない』
『計り知れないチカラ』に
恐怖をもつ。
それが
顕著に現しているのが
『賢者の存在』ではなかろうか。
・・・ルーナの村に伝わる
『偉大な魔法使い』
ルーナの話だと
王室仕えだった魔法使いが
争い事に巻き込まれるのを嫌って
仲間と共に
村を作って隠れ住んだ。
この国に伝わる『賢者の伝説』では
誰よりも強い賢者が
その圧倒的なチカラで
国民を苦しめ
たくさんの魔法使いが
生命を投げ出した結果
賢者を倒して
世界に平和が訪れた。
2つの物語を
すり合わせてみる。
賢者の
圧倒的なチカラで守られてきた
国民は
自分たちに
その矛先が向けられる恐怖をも
持ち合わせていた。
彼らの持つ畏怖に
賢者や魔法使いたちが
気付かないはずはない。
自分ならどうする?
チカラで押さえつけるか?
それでは
いずれ
民の感情が爆発する。
ならば
この地で隠れ住んだ方が
『どちらも救われる』のでは
ないだろうか。
『賢者の伝説』に出てくる
賢者と戦って
生命を落とした魔法使いたち
彼らの名前は
誰一人分からない。
だが
当時の記録から
賢者と共に
『沢山の魔法使いが居なくなった』
のは事実らしい。
では
この村に移り住んだ
魔法使いたちが
記録から消えた
魔法使いたち
それだと
合点がいく。
モゾモゾと
腕の中で眠るルーナが
オレは考えを止めた。
軽く抱きしめて
「大丈夫だ。ルーナ」と囁き
頭を撫でて
背中を軽く叩く。
「ふぅっ」と息を吐いた
ルーナの身体から
チカラが抜けて
落ち着いた寝息が
聞こえてきた。
そうだ。
今のオレが優先すべきなのは
過ぎた過去に
思いを飛ばすことではない。
この腕の中の
『小さな存在』を
あの連中から
守り抜くことだ。
オレは
目を閉じて
腕の中の温もりに
安らぎを感じながら
眠りについた。
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