第11話




洞窟内は

けっこう明るかった。



天井に

ヒカリゴケが育っており


それが

星空の下にいるように

錯覚させていた。



しばらく道なりに進むと

広場のように

少し開けた場所を見つけた。



ここなら大丈夫だろう。



「ルーナ」



オレは

周りより盛り上がっている

草の生えている場所で


ウエストに付けている

アイテムボックスから

ラグを敷いて座り


繰り返し

ルーナの名を呼ぶ。



「ルーナ」



いつものように

強く抱きしめて


頭を撫でて


背中を軽く叩く。



「・・・・・・ヒック」


ルーナの小さな身体が

ピクリと動く。



「わたしの・・・せい・・・?」


「違う」


「わたし、が・・・」


「・・・ルーナ?」


「わたし・・・わたしが・・・」



ルーナの中から

今まで感じたことのない

強い魔力が湧き上がる気配・・・



「ああああーーー!」



叫び声とも

悲鳴とも

判断出来ない声をあげる。



「ルーナ。もう大丈夫だから。落ち着け」



「ヤアアアーーー!イヤアーーー!」



狂ったように

泣き叫ぶルーナを

落ち着かせようと抱きしめる。


それを

身をよじって

逃れようとする。



小さな口を

限界まで大きく開き


焦点の合わない目は

過去の惨劇を見ているのか・・・




オレは

ルーナの口を

自身の口で塞いだ。



暴れる

ルーナのアタマを押さえつけて。





どのくらい

時間がたっただろう。


長く感じていたが

実際は短いのかもしれない。




腕の中のルーナは

突っ張っていた手足から

チカラが抜け

大人しくなっていた。


ルーナの

頭を押さえていた手を緩め

口を離す。



ルーナの目には

生気が戻り


今度はちゃんと

オレと目を合わすことが出来た。



「ふぇ・・・かみゅー」


「おかえり。ルーナ」



ルーナの額にキスを落とすと


安心したのか

涙が溢れ出して


オレの首に抱きついてきた。




「ただいま」と泣きながら。







※カミュがルーナの口にしたのは

『キス』じゃありません

口を塞いで呼吸を抑えることで

興奮状態の相手を落ち着かせるための

『治療』です(笑)


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る