第9話



麓の村人から聞いた山から

ひとつ外れた山道を

ルーナと進む。



生まれ故郷が近くなって

懐かしい空気を感じて

嬉しいのか


ルーナは

いつもより元気だ。



「ぴょん♪」



オレが手を持って

支えているとはいえ


ルーナはすぐ

岩や切り株から飛び下りたがる。




「・・・ルーナ」


少し離れた場所で

花をしゃがんで見ていたルーナが


オレの緊迫した声に反応して

慌てて腕の中に飛び込んできた。



そのまま岩陰に隠れて

息を押し殺す。




「こっちは異状なし」


「こっちの道もだ」



近くの村に滞在している

騎兵隊と思われる2人が

声を掛け合っている。



この先に

枝道があるようだ。



「もう戻ろうぜ」


「そうだな。早く宿舎でキューっと一杯やりたいもんだ」




・・・どこへでもサッサと行ってくれ。




「それより第一騎士団が探している『悪魔の子』は見つかったのか?」


「あ?『呪われた子』じゃないのか。まだ見つかってないらしいがな」


「どっちにしろ『手をくだしたら呪われる』んだろ」


「俺は『関わったら殺される』と聞いたぞ。そんな奴、どっかで野垂れ死にしてくれればいいのにな」


「まったくだ」



バカ笑いをしながら

騎兵たちは遠ざかっていく。



笑い声が聞こえなくなって

オレは緊張を解いた。





「ルーナ」


オレの腕の中で

青ざめて固まっている

ルーナに

声をかける。



「ルーナ」



再度呼びかけても

ルーナは固まったままだ。



・・・ここで正気に戻すのは危険だ。



ルーナが声をあげれば

やり過ごした連中が戻ってくる。


下手すれば

仲間を呼ばれてしまう。





・・・・・・オレとしては

ルーナのココロを傷付けたヤツらを

地獄の底まで落としてやりたいが。




オレは

ルーナを抱き抱えて駆け出す。



連中に

仕返しするより



ルーナを守りたかった。


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