第3話


城下町で

窃盗をしくじって

牢屋に入れられた。


それも王城の地下牢だ。


何度も入っているから

どこに隠し通路があるか分かってる。


そして

何度も脱獄している。


それでも

何故かここに放り込まれる。




そして今回

この牢には相応しくない

『先客』がいた。



「おい。なんだよこのガキ」



そう言ったら

ガキの先祖とやらが

『大犯罪者』らしい。


先祖の罪を

このガキに背負わせる気か。



さすが

『血も涙もない愚王』だ。



オレを牢に入れた兵士は

オレをぶち込んだ鉄格子のカギを

何度も確認して

地上へ出ていった。



ガキの入っている牢の鉄格子を蹴りつけて。



さて

ここから出るとしますか。


気付くと

さっきまで床で倒れてたガキが

目を覚ましたようで

声を押し殺して泣いていた。



・・・ガキの泣き方じゃないだろ。




「おい」



声をかけたら

涙で濡れた目を

こちらへ向けてきた。



「オレと一緒にここから出るか?」


そう言ったら

目を丸くして頷いた。




そうだ。

『先祖の罪』なら

こいつの親にでも

押し付ければいいじゃないか。




ガキのいる鉄格子の扉を開けたら

怯えた様子で出てきた。



「こっちだ」



誰もいない牢屋の鍵を開け

中から鍵を閉め直す。


奥にある木箱の後ろにある

壁の小さな隙間から

「隠し通路』へ入る。


そこから

長い通路を進んで行く途中で

ガキの話を聞いた。



名前はルーナ。

もうすぐ12歳。

問題は

村の名前も場所も分からない事だ。




だが

ガキ・・・ルーナは分かってないが

話を聞く限り

村が焼き討ちにあったらしい。


それなら町で

『兵士たちが『実戦』もしくは『練習』に行った場所』を調べればいいだろう。



とりあえず

ルーナを『隠れ家』に連れて行った。


大人しく待ってるように言って

簡単な食事や飲み物を置いて出た。



情報は

酒場で簡単に手に入った。


「最近『第一騎士団』が犯罪者の隠れ里を見つけて討伐してきた」

らしい。


『第一騎士団』って

国王直属であって

そんな『討伐』に出る部隊ではない。



向かった場所は分からなかったが

『第一騎士団』が通った町や村や街道を

調べて行けば検討はつく。



適当に料理をテイクアウトして

夕方には

『隠れ家』へ戻った。


ルーナは

飲まず食わずで過ごしていたらしい。


テイクアウトした料理を出すと

不思議そうにしていた。


初めて見る料理だったようだ。


恐る恐る

ひと口食べて

「美味しい」と嬉しそうに笑った。


こんな

大衆食堂のメシで喜ぶなんて

どんな生活してたんだ?



とりあえず

残った料理は

アイテムボックスに放り込んでおいた。


旅の中で

食べさせてやろう。



メシの後

生活魔法で身綺麗にしてやると

目を丸くしていた。


ルーナの村では

普通に

家には風呂が付いているし

公衆浴場もあるらしい。


「スゴい!スゴい!」と

はしゃいでいたが

家に風呂がある方が

逆にスゴいとオレは思う。



とりあえず

ルーナをベッドで寝かせて

オレはソファーで寝ると言った。


ルーナは

ここはオレの家だから

ベッドで寝るのはオレの方だ

自分は小さいから

ソファーを使うと引かない。


思わず

「男にはカッコつけさせろ」って言ったら

首を傾げてた。



早朝の人目につかない時間に

ここを出ようと思っているから

ルーナを抱き抱えてベッドに入れたが

服を掴んで離さない。


小さな手は震えていた。


ああ。

こいつは『惨劇』の生き残りだったな。



ため息を吐いて

一緒にベッドで寝ることにした。



寝ている間

焼き討ちを目にしたルーナは

酷くうなされていた。


その度に

小さい頃

母がしてくれたように

抱きしめて背中を叩いてやると

すぐに静かになり

寝息が聞こえるようになった。



オレたちは

日が昇る前に『隠れ家』を後にした。


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