本論 「なろうテンプレ」とは「読むチート改造したRPG」である

 結論から述べましょう。私は「なろうテンプレ」とは「読むチート改造したRPG」であると考えました。


 前話で述べたような要素によって構成されるのが「なろうテンプレ」です。その要素の中には、色濃く「コンピュータRPG」の影響が見られます。


 つまり、「なろうテンプレ」というのは、一般的な「小説」を好む層ではなく、むしろ「ゲーム」それも「RPG」を好む層が読んでいるのではないかというのが、私の推測なのです。


 だから、「小説」が好きな人ならば気にしない、いやむしろ好むであろう「細かい描写」などは好まれないのです。


 また、セリフによって状況や設定を説明することが好まれます。


 それは当然でしょう「RPG」には「地の文」はありません。全部キャラクターがセリフで説明してくれます。また、世界観の描写も文章では行われません。すべてビジュアル的に見ればわかるんですから。


 逆に言えば、そういう「RPG」好きな層というのは、短いセリフでの説明ならゲーム画面で読むことに慣れているので、読んでくれるというわけです。


 あるいは、そういうセリフ主体の説明でないと、読んでくれないと言っても良いのかもしれません。


 そして、もうひとつの重要な要素が「チート改造」です。


 これは何か。通常「RPG」というのは、主人公が冒険をして「経験を積み重ねる」ことで「徐々に強くなる」のが普通です。


 これには時間がかかります。単純作業の繰り返しによって、コツコツとレベルを上げていく必要があります。


 普通は、そこでコツコツと努力するからこそ、強くなったことに達成感があり、それで満足感と爽快感が得られると考えられます。


 しかし、これはある意味では「ストレス」と言っても良いでしょう。


 そのストレスを感じずに、爽快感だけを楽しむことはできないのでしょうか。


 実はその方法こそ「チート改造」なのです。ゲームのプログラムを改造して、コツコツとレベルアップをしなくても、最初から最強レベルまで育った状態のキャラクターを作ることが可能なのです。


 あるいは主人公が不死身になったり、敵の攻撃が一切効果を発揮しないような改造をすることができる場合もあります。


 この「チート改造」は実は違法行為です。こうした改造ツールに対して任天堂が起こした訴訟によって、ゲームのプログラムを改造することに対して著作権侵害が認定されました。著作権法違反なんです。


 だからこそ「騙す」あるいは「不正を働く」という意味の「cheatチート」という言葉が使われているんです。反則行為なんです。


 お分かりいただけましたでしょうか?


 この「チート改造」をすれば、RPGを最初からストレスフリーでサクサク遊び進めることができるのです。


 これこそ、正に「なろうテンプレ」そのものではありませんか!


 そう、「なろうテンプレ」とは、この「チート改造したRPG」を文章で読めるようにしたものに他ならないのです。


 実際にゲームをするのではなく、さらにお手軽に「チート改造したRPG」のストーリーを楽しみたいという欲求を充足させるものが「なろうテンプレ」なのです。


 私は、こう結論づけました。


 もちろん、これはかなり偏った見方であることは自覚しております。いろいろと穴があるかとは思います。ただ、私が「なろうテンプレ」を書こうとして自分自身で向き合った結果として得られた結論はこうなります。


 それでは、この結論から何を導き出すかについて、最後に論じたいと思います。

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