第24話 episode:24

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夏休みまで残す日が少なくなり、教室内は少しずつ




“夏休みに何をするか”といったような内容の会話が飛び交っていた。




四天王の一人、夏目梨々花もその中の一人であった。




「梨々花ちゃん、おはよう~!」




登校してきた麗にいつもより柔らかい笑顔を向ける。




「あら。おはよう。」




「こないだの事からなんだか梨々花ちゃんは嬉しそうだね~!!」




“こないだの事”とは佐々木幸太郎からの誘いである。




「そんな事ないわよ!!」




梨々花は緩んだ頬を隠しながら机へと顔をふせる。




「またまた~照れちゃって~!じゃあそれはなに~?」




そういうと麗は梨々花の鞄から顔をだしている雑誌に指をさす。




「ここここれわ!!」




梨々花は慌てて鞄の中へ雑誌を隠そうとするが、慌てた反動で雑誌が鞄から落ちる。




表紙には“夏休み特集!お祭り・プールデート編”と大きく書かれていた。




「相変わらず、勉強熱心だね~!」




そういうと麗はニヤニヤとする。




「お祭りなんて行ったことないからよ!たまたま本屋に置いてあったの!!」




梨々花は床に落ちた雑誌を急いで拾う。




「私もお祭りって行ったことないな~・・。」




「お祭りって何をするのかしら・・。」




「・・。」


「・・。」




2人の間には沈黙が流れた。




「雑誌にはなんて書いてあるの?」




梨々花はペラペラと雑誌をめくる。




「ん~。出店とか・・花火とか・・浴衣とか??」




「浴衣!それなら麗も役に立てるかも!!」




麗の家は茶道の家元であり、着物や浴衣といった和装も取り扱っていた。




「浴衣・・。浴衣・・!!それだわ!!」




麗の提案に梨々花も目をキラキラさせる。




「お母さんにも話を通すから、今日の帰りに見に来る?」




「和装に関しては春野家が強いものね!行くわ!!」




「じゃあせっかくだから真琴と華恋も誘ってみようか~!」




(幸太郎君・・梨々花の浴衣姿が見れるなんて、なんてラッキーな男なのかしら。)




梨々花は再び頬を緩めていた。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・






「おお!楽しそうな誘いだな!!」




「でしょ~!華恋も来れる?」




「ええ。」




昼休みの特別室3でも、夏休み浴衣大作戦について話し合われていた。




「お母さんにも伝えたし~かわいい浴衣があるといいね!!」




「やっぱり持つべきものはお金と権力と友人ね。」




「これで幸太郎君もきっと梨々花ちゃんに惚れちゃうね~!!」




「梨々花の誕生日まで時間も限られているわけだし・・無駄にはできないわ!」




「梨々花の誕生日がどうかしたのか?」




「まぁいろいろね・・」




そう伝えると梨々花は亮子が出した条件について3人に伝えた。




「すごい条件ね・・。」




「亮子さんらしいといえば亮子さんらしいな・・。」




「梨々花ちゃん~そんなことになっていたの?!」




3人のお弁当を食べていた手がとまる。




「大丈夫よ!幸太郎君を虜にできればいいのだから!」


梨々花は自信満々に答えた。




「はぁ~幸太郎君が梨々花ちゃんに告白してくれないかな~。」




麗は頭の中で勝手に妄想を始めていた。




「それは無いわね。」




「?」




「なによ。華恋は梨々花に幸太郎君を落とせないっていうの?」




「いや・・違う。」




「華恋がいう無理とは、規則で無理ということだな!」




「「規則?」」




梨々花と麗は頭の中にハテナマークを浮かべる。




「私たちは学校でパニックがおきないように校則を付け足したではないか。」




「校則第20条 四天王に対しての手紙・呼び出し等を含む告白行為を禁止とする。」




初等部からこの学校に通っている四天王は、毎日に及ぶ告白行為が嫌になり、自分たちの権力で校則を付け足したのであった。




「あっ・・忘れてた・・。」




「自分たちの作った校則で自らの首を絞めることになるなんて・・。」




「じゃあ、また校則を変える?」




真琴はニコニコしながら提案する。




「そんなことしたら、また地獄だよ~。」




「じゃあ、佐々木幸太郎の告白だけは良しとする!とかどうだ?」




「それだ!」




「ちょっと!そんな不自然な事しないでよ!真琴は余計な事しないでよ!」




「そんな一意見で校則変えたりはできないよ~!!」




ははは!と笑う真琴であったが、この人物は学校内で一番権力のある人物であることを忘れてはいけない。




生徒会長であり、母親はこの学校の理事長でもあった。


真琴自身が校則のようなものである。




「とにかく!告白はどうにかするから!今日はお祭りの話でしょ!」




このままでは校則が変わりかねないと察した梨々花は慌てて鞄から雑誌を取り出す。




「浴衣と夏の甘い空気で幸太郎君をメロメロにさせちゃう大作戦~!!」




「お~~!!」




「・・。」




「期限は残り一週間!!」




そうして特別室3では女子高校生たちによる会議がまた開催されたのであった。




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