第23話 episode:23
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某高校に存在する四天王。
美力・知力・財力・権力・・あらゆる力を持つ女4人組を周囲はそう呼んでいた。
絶対主義者であり、頭の中に不可能の文字が無い女
夏目梨々花。
そんな彼女は現在・・
「梨々花ちゃん~どどどどうしたの?!」
教室の隅で丸まっていた。
「敵が・・強すぎる・・。」
耳まで赤くした梨々花の姿がそこにはあった。
「敵って?」
「佐々木幸太郎よ・・。好きだと気づいてから・・」
“眩しくて・・かっこよく見えて仕方がない・・。”
梨々花の言葉に麗までもが顔を赤くした。
「こっちまで恥ずかしい~~~!」
無敵・最強の梨々花が・・こんなにダメージを受けるなんて。
「恐るべし恋の病。そして恐るべし・・佐々木幸太郎・・。」
顔を赤くする女子高校生の姿がそこにはあった。
「昨日の事は大丈夫だったの?」
「まぁね。大丈夫そう。」
「それにしても、礼って子すごいよね!」
「敵ながらあっぱれだわ。あんなに堂々とした告白ができるなんて。」
あんな一般市民を敵だなんてまず思ってないけど。
「梨々花ちゃんは幸太郎君のどこが好きなの?」
「えっ?」
どこが好き?
「どこか好きなところがあるからそんな風にキラキラして見えるでしょ?」
「・・。」
梨々花は麗の質問に答えられないでいた。
“どこが好き”など考えたことがなかった。
「わからないわ・・。」
「そういう恋の形もあるか!!ごめんごめん!!」
せっかく気が付いた恋に水を差してしまったと麗は慌てて質問をもみ消す。
(幸太郎君のどこが好きなのかしら・・。)
答えの分からない疑問に梨々花は頭を悩ませたのであった。
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「梨々花ちゃん~!!今日の放課後みんなでお茶でもしない?」
時刻は16時を過ぎたころ、麗の提案で今日は女子会が開かれることとなった。
「お!2人ともそろったな!」
「真琴も今日は生徒会の仕事がないの?」
夕方にのんびり集まれる時間が少ない真琴と華恋はすでに集合をしていた。
「生徒会長でも休暇はほしいからな!」
「華恋も集まれるなんて、めずらしいわね。」
「これからはしばらく日本に入れるから・・時間があるの。」
小学生の頃は毎日一緒に遊んでいた。
しかし高校生にもなると個々の時間も増えて簡単には集まれなくなっていた。
「いつもの場所でいいかな?」
4人の意見もそろい、全員同じ方向へと足を進める。
「みて~四天王がみんな揃ってる!」
「シャッターチャンス!!」「なんて美しい集団なのかしら。」
周りは相変わらずザワザワとしていたが、4人にとっては慣れたことである。
「梨々花ちゃん!こないだ貸した本の3巻が発売したよ!」
帰りに本屋へ寄っていこうよ!
「フフフ。麗、遅いわよ。」
そういって梨々花は3巻を鞄から取り出した。
「もう買ったの?!」
驚く麗に、梨々花は嬉しそうに付け足す。
「もう10回は読んだわよ。」
ペラペラとページをめくる梨々花の本になにやら気になることを見つける。
「梨々花ちゃん・・なんか本に書き込んである?」
「そうよ。」
見せられた本にはマーカーで線が引かれており、
ペンで書き込みまでされていた。
「まるで・・」
「「「教科書・・。」」」
本を覗き込んだ3人は目が点になっていた。
「梨々花はなにごとも勉強熱心なのよ。」
梨々花はそう得意げに話している。
「梨々花ちゃんのそういうところ昔から変わらないね~!」
「勉強熱心な事はいいことだ!!」
「・・。」
「けど・・幸太郎君のどこが好きなのか、恋ってなにかそれはどこにも答えが乗ってないのよね・・。」
梨々花の目は完全に迷える子羊となっていた。
「ほら~恋って色々あるからね~!!」
「色々って?」
「・・えっと・・。」
麗は助け船を真琴と華恋に出す。
「えっ!私は恋をしたことがないからな~・・」
「右に同じく。わからないわね・・。」
恋愛経験ゼロ集団は重いため息をつく。
「答えの見つからない課題だわ・・。」
「ほら!!ついたよ!みんな中に入ろ~!!」
空気を換えるべく口を開いた麗が見えてきた建物を指さす。
“秘密の花園”
そう書かれた入り口の扉が開く。
「お待ちしていました。皆さま。」
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ここは昔から4人が通っているカフェである。
外からみても可愛いカフェであるが、ここには4人しかお客が来ない。
四天王の隠れ家である。
元々は麗の家が所有していた建物をカフェへと建て直したのであった。
「久しぶりに来たわね。ここはいつ来ても落ち着くわ。」
「周りの目がないからな!!」
「私、抹茶ラテが飲みたい~!」
「梨々花はミルクティーがいいわ。」
「・・ブラックコーヒー。」
「私はスポーツドリンクだな!!」
かしこまりました。と使用人はキッチンへと向かった。
「麗って本当に抹茶系の飲み物しか飲まないわね。」
「抹茶は小さいときから飲んでいるからね~。」
麗の家は何百年と続く茶道の家元であった。
「・・抹茶は今、海外でも人気・・。」
「結構、最近は外国の人たちとも交流があるよ~!」
そんな世間話をしているうちに、奥からはいい匂いがしてくる。
「お待たせしました。」
使用人は丁寧にグラスやカップを4人へ届ける。
「それで~!本題だけど!!」
そういうと麗はキラキラした目を梨々花へと向けた。
「・・何よ。」
「なによじゃないよ!!これからの作戦!」
どうするの?
「私の情報によると、幸太郎君は今までに恋愛経験もなし。もちろん彼女もなし。」
真琴は鞄から厚めの書類を取り出して、難しい顔をする。
その書類なんなのよ!と心で突っ込む梨々花であったが、
(こんなところで突っ込んでいたらきりがない。)
と判断して大人しくしていた。
「そしてこれからやってくる夏休みの予定もなし。」
「決まりだね~!」
「決まりだな!」
「・・決まり。」
3人は目を輝かせて梨々花へと視線を向ける。
「?!」
「デートに誘うチャンスだよ~~~!!」
「デデデデートなんて、誘えるわけないでしょ。」
「水族館だって行ったし~今更照れることでもないよ~!!」
「じゃあ、夏休みの間に幸太郎君に会えなくてもいいのか?」
約1ヵ月の間会えないなんて。
「それは、会いたいけど・・。」
「決まりだね~!!」
「決まりだな!!」
「・・決まりね。」
“梨々花と幸太郎デート大作戦”が進行し始めたのであった。
「こんなに可愛い梨々花ちゃんの誘いを断る男性なんていないって~!!」
“フッ”
梨々花は鼻で笑う。
「・・確かに。天下の梨々花様が断られるはずがないわよね!!」
「今夜早速、連絡とってね!!」
「あっ・・。」
梨々花はとあることを思い出していた。
『今日の夜、用事があるからメールする。』
「・・梨々花の顔が赤いわ。」
「梨々花ちゃん?!どうしたの?」
「今日の夜、連絡来るんだった・・。」
「幸太郎君から?!いきなりチャンスじゃん~!!」
「梨々花!そこでしっかり誘うんだ!」
「分かってるわよ。」
女子会はその後、数時間続き周囲を見渡した時には既に外が暗くなっていた。
“ブー”
梨々花の携帯が知らせたのは、幸太郎からの連絡であった。
「もしかして幸太郎君?」
「まぁ。」
「夏休み入ってすぐの祭りに行けないか?」
「ちょっと!真琴!勝手に見ないでよ!!」
突然の誘いに顔を赤くする梨々花を優しい笑顔で見守る3人の姿がそこにはあった。
「べつにいいけどって・・梨々花もう少し嬉しそうにメール返せないのか?」
「そうだよ~~男はハートマークに弱いって聞いたことあるよ!!」
華恋も深く頷いた。
「いきなりハートマークなんて怪しすぎるわよ。」
「え~。」
つまらないの~と麗は梨々花を睨む。
「けど、デートできる・・。梨々花、おめでとう。」
「なっ。」
改めて言われると・・
「恥ずかしいから!」
“ブー”
幸太郎の返信内容を見て梨々花は急に噴き出す。
「?!なんだ?」
「さちかちゃんと3人でお祭りに行ってくるわ。」
「3人?!」
「デートじゃないな・・。」
「いいのよ。幸太郎君のそういうところ好きだから。」
“好き”
の言葉に3人は顔を見合わせる。
「なんだ~梨々花ちゃん、しっかり幸太郎君の好きなところ見つけてるね~!」
「?」
無意識の梨々花になんでもない!と麗は伝えて話を戻す。
「夏休み、幸太郎君とさちかちゃんにも会えるしすごく楽しみだわ。」
「じゃあ、もう外も暗いし~お開きにしようか!!」
「そうね。」
夏休みまであと1週間。
梨々花はワクワクしながらカフェを後にしたのだった。
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“ガチャ”
「ただいま。」
桐の迎えで家まで帰ってきた梨々花は浮かれていた。
「あら。遅かったのね。」
待っていたのは亮子であった。
「お母様、まだ日本にいたのですか?」
「母親にそんな冷たい事いうの~?」
まぁいいわ。と亮子は意地悪な笑顔を向ける。
「8月20日に婚約発表をするわよ。」
梨々花は耳を疑った。
「婚約発表ですって?!」
「そうよ。あなたの誕生日パーティーでね。」
「こないだの条件で・・」
「そうよ、佐々木幸太郎を落とすこと。」
「なら!」
「期限は必要でしょ?私もいつまでも待っていられないわ。」
8月20日が期限よ。
亮子はそれだけ伝えると、自身の部屋へと戻っていった。
「あと1ヵ月ちょっと・・」
「梨々花様、大丈夫ですか?」
「フフフ」
梨々花は余裕の笑顔で笑っていた。
「1ヵ月以上あるなんて・・楽勝じゃない!」
「梨々花様。」
「大丈夫よ。けど今夜はもう部屋で休むわ。」
そして、梨々花の誕生日までのカウントダウンが始まったのであった。
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