第23話 再開

「貴様は……!?」


 突然現れた僕に、ミラス王は驚く。チラリとミルちゃんを見てみると、手に手錠をかけられ、よく分からない首輪を付けられてる。あれは……凱旋の時、ミラス王の傍にいた娘達が付けていた物と同じ物だという事に気づく。そして何より……泣いていた。


「レイ、いくよ」

『……はい。いつでも』


 僕は地面を思いきり蹴り、ミラス王と距離を詰める。そして、剣を構えて横薙ぎする。もちろん刃がない方で。いくらクズでも、流石に殺すのはまずい。一国の王だしね。


「ぐっ!!」


 ミラス王は、その体型からは想像出来ない程の反射神経で僕の攻撃を避けた。


「貴様ぁ!!王である俺にこんな事していいと思ってるのか!?」

「安心してください王様。殺さない程度にしますので」


 僕は激昂しているミラス王に、ニコリと微笑みながらそう答えると、ミラス王は「うっ……!」と少し怖気付いたように後ずさる。


「そいつは……王なんかじゃない……」

「ミルちゃん……?」


 すると、拘束されているミルちゃんがそう呟く。ミラス王が王じゃないってどう言う事だ……?ミルちゃんの言っている事が分からないでいると、レイが何か気づいたように呟く。


「……おかしいと思っていましたけど、まさか……」

「どうしたのレイ?」


 僕が言葉を促すと、少し震えた声で話し始める。


「……以前お父さんから、この国について聞かされた事があります。お父さんは何度かミラス国に訪れた事があったようで、ミラス国の王様と王妃様は素晴らしいお方だと皆んなに話していました。なので、初めてミラス王を見たときに、想像していたのとかけ離れていたので少し違和感を感じたんです」


 ミラス王が素晴らしい人……?チラリとミラス王を見るが、脳内で「ないない……」と否定する。当然だ。


「何故街の人達は気づかないのかは分かりませんが、ミルさんの発言から察するに、このミラス王は……」

「偽物……って事?」


 でも、確信がない限りミラス王は斬れない。殴りはするけど。どうしようかとミラス王(?)を睨みつけてると、ある異様な感覚に襲われる。


「……ルベール?」

「……!?」


 僕が、脳内に流れ込むようにして浮かんだ文字を呟くと、ミラス王(?)に動揺がはしった。


「何故貴様がその名を……!?」


 これって名前だったのか。というか、ルベールって誰だ?


『ルベール……どこかで聞いたことのあるきがするんですけど……』


 レイも聞いたことあるのか、必死に思い出そうとしている。しかし、ミラス王(?)が黙って思い出すのを待ってくれるはずもなく、ちょうど近くに飾ってあった剣を手に取り、僕に向かって振りかぶる。


「遅い」


 僕はその攻撃を軽く避け、ミラス王(?)の腹部に蹴りを入れる。


「ぐふっ!?」


 ミラス王(?)は、とても不快な声をあげて吹っ飛び、壁に激突して地面に転がった。ピクリとも動かない様子を見て、嫌な予感がよぎる。


「あ、やりすぎたか……?死んでないよな?」


 ミラス王(?)を今、殺すわけにはいかない。もし本当に国王じゃないのなら、相応の償いをさせなければならない。ミラス王(?)の様子を確認しようと近づいた瞬間、ミラス王(?)が急に起き上がり僕にタックルしてきた。


「ぐっ!?」

『拓様!?』


 さすがは巨体……一撃貰っただけなのに呼吸が一瞬止まり、思わず床に膝をつく。このタックル、ケルベロスといい勝負かも……。


「がふっ!?」


 僕が膝をついた隙を狙って、ミラス王(?)は僕の顔面に膝蹴りをくらわす。そして、その膝蹴りから連鎖するように後ろ蹴りが顔面に打ち込まれる。視界がぐらつき、頭が真っ白になる。


「どうした!?威勢よく現れて情けねぇな!!」


 ミラス王(?)は、僕が動けない事を良いことに、罵倒しながら何度も何度も頭を踏みつけてくる。


「……ぁ?」


 ミラス王(?)がもう一度僕を踏みつけようと足を下げた瞬間、僕はミラス王(?)の足を掴む。


「……捕まえた」


 僕はその足を持った手を勢いよく高く掲げる。すると、バランスが取れなくなったミラス王がドスンっと大きな音を立てて地面に倒れる。そこにすかさず剣を突き立てる。


「ゲームオーバーですよ王様」


 ミラス王(?)に敗北宣告を告げる。しかし、ミラス王(?)はこんな状況にも関わらず、クックック……と余裕の笑みを浮かべている。……嫌な予感がする。何故かそう思った。


「まだ俺は負けていない……」

「何……?っ!?」


 次の瞬間、僕の左側にある壁が爆音と共に砕ける。レイの姿を戻し、その衝撃波からレイとミルちゃんを守るように胸に抱き寄せ、僕は衝撃波を背中で防ぐ。思ったよりも衝撃が強く、レイとミルちゃんを胸に抱きながら転がる。


「二人共無事?怪我はない?」

「……はい、大丈夫です」

「私も……大丈夫です……」


 何故だろう?仄かにだがレイとミルちゃんの頬が赤いような気がする。


「よく来たゴートよ」

「っ……!」


 しかし、僕はミラス王が発した名前を聞いて瞬時に体勢を立て直す。僕の視線の先ーーそこには僕が敗北した相手、ゴートが立っていた。





 

 







 


 

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