第15話 道具屋

 武器を買い、腰にロングソードを携えて武器屋を出た。次は何処へ行こうかと考えていると、レイが道具店アイテムショップに行った方がいいと言ってきた。どうやら、傷を治す薬や魔法燃料マジックポイントを回復する薬などが置いてあるらしい。今後役に立ちそうだし、買って損はないだろう。


 道具屋を探しながら街をブラブラしていると、明らかに周りの店よりお洒落な装飾がされている店を見つけた。僕はその店が気になり覗いてみると、どうやらアクセサリー等を売っているようだ。


「ねぇ、レイ」

「……?」


 僕は、隣にいるレイに声をかける。店の前で足を止めて、並べられているネックレスを手に取る。レイの瞳と同じ碧色の宝石が付いているネックレスだ。レイの首にそのネックレスを付けると、美しい顔立ちも相まってとても似合っていた。


「すみません、これください」

「……!?拓様……!?」


 僕は店員さんを呼び、レイの首に付いているネックレスを購入する。やはり宝石と言うだけあって、少し値段はした。銀貨15枚……武器よりは安いが、そんな簡単には手を出しにくい物だろう。レイは、困惑した表情でネックレスと僕の顔を交互に見ていた。


「レイには助けてもらってばかりだったし、何かお礼をしたくてね」

「でも……私にはこの様なものは……」


 レイは謙遜けんそんしているが、レイ以上にネックレスが似合っている子は見たことがない。僕はレイの姿に満足していると、レイが顔を赤くして「……ありがとうございます」と消え入りそうな声で言った。僕が「どういたしまして」と言うと、更に顔を赤くした。何この子めっちゃ可愛い。


 そんなやりとりをした後に、僕達は道具屋アイテムショップへとたどり着いた。道具屋アイテムショップは、日本でいう骨董屋こっとうやに似ていたため、すぐに見つけられた。外にも道具アイテムが並べられているから間違いないだろう。


「すみませーん」


 ガラっと戸を開け、店内を見渡す。どこか古い印象を受けるが、隅々まで手入れがされており、埃っぽさはない。道具屋アイテムショップに入り辺りを見渡すが、どこにも店員の姿が見えない。……またかよ。薬屋でも店員がいなかった事を思い出し、嫌なデジャヴにげんなりした。


「うあっ!?」


 しかし、誰もいないと思っていた店内から女性の声が聞こえ、同時に奥の本棚に並べられた本がドサドサっと落ちる。僕とレイは慌てて声のする方へ向かうと、20代前半くらいの丸眼鏡をかけている女性が、床に尻餅をついていた。まだ落ちていなかった本が時間差で落ち、女性の頭にクリーンヒットする。その時、「うきゃっ!?」と言って頭を抑えた。


 ◇ ◇ ◇


「先程はどうも、お見苦しいところを……」


 女性は恥ずかしそうに頭を下げている。先程は尻餅をついていたから身長が分からなかったが、今見てみると、僕より身長が高かった。僕が170ぐらいだから、この人は174あたりだろうか?正確な数値は分からないが、そのあたりだろう。女性の栗色の髪にはアホ毛がぴょこんと帽子の隙間から覗いてた。魔女みたいな姿がまた道具屋アイテムショップのイメージにピッタリだ。


「いえいえ、それこそ大丈夫ですか?」

「あ、はい!慣れてますから!」


 すごく満面な笑みで言われたが、僕は「あはは……」と苦笑するしかなかった。最初見た時に思ったが、もしかしなくとも、この人はドジっ子なのだろう。よくよく見てみると、ところどころに絆創膏ばんそうこうが貼ってあった。


「ところで、今日は何をお探しで?」

「あ、これからの旅に役立つ道具とかありますか?回復ポーションとか」

「ありますあります!」


 女性は、壁側にある棚にある引き出しをゴソゴソと漁り、あるものをジャーンっと言いながら取り出した。


「これは?」

「冒険初心者セットです!この中には回復ポーションにマジックポーション、毒消し等いろいろ入っています!」


 たしかに、これ一つで旅にはとても役立ちそうだ。僕はこれを買おうと思い、初心者セットの値段を見る。


「うぐっ……!?」


 値段を見て卒倒しそうになった。……0が1、2、3、4個……とても今の所持金では足りない。レイも値段を見て恐怖しているのか、プルプルと震えている。僕達は初心者セットを諦めて、回復ポーションとマジックポーションを二つずつ買い、道具屋アイテムショップを後にした。ちなみに回復ポーションが銀貨3枚だった。お手頃値段で良かった。


 この日は、武器屋に行ったり、道具屋アイテムショップに行ったりと色んな場所に回った事による疲労が溜まっていたのもあり、道具屋アイテムショップを出た後は宿屋に戻った。宿屋に着く頃には日も傾き始めており、丁度良い時間だったらしい。


 宿屋の扉を開くと、僕達に気づいた宿屋の女将さんが、こっちに来いと言いたげに手を縦に振っていた。何だろうと思いながらも近づくと、僕とレイに、パンと、肉がゴロゴロ入っているスープと、二人分なのか大きな骨つき肉をドンっとカウンターに置いた。僕達が困惑していると、女将さんが肉を焼きながら説明してくれた。


「この宿は夕飯付きなんだよ。本当はパンとスープだけだけど、あんたらは皆んなよりも多く金を貰っているからね。それくらいサービスさせてくれよ」


 おばさん特有の優しい笑みでそう言ってくれた。そういえば、この世界に来て一度も食事を取っていなかった事に気付き、お腹が思い出したかのようにぐぅ〜と音を立てた。僕とレイは女将に感謝しながら、夕飯を食べた。お肉は何の肉だか分からなかったが、とても美味しかった。

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