第14話 ミラス王国の国王
「ふぅ〜……」
なんかこの世界に来てから色々ありすぎて、ゆっくり休んだ記憶がない。僕は、宿屋の個室に設置されていたベッドにダイビングして、深く息を吐きリラックスする。木材を基調に出来ている部屋で、少し古臭い印象を受けるが、野宿するかもしれなかった僕達にとっては、これ以上求めるのは贅沢というものだろう。
「……荷物などはここに置いておきますね」
レイが金貨が入っている袋や、薬草などが入っているバックを部屋の端に置く。すると、レイも僕と同じようにベッドにダイビングをする。僕がダイビングしているベッドに。
「ちょっ!?レイ!?」
設置されているベッドは一人で用ベットで、当然二人が寝るとなると、お互いに密着しなければならない。つまり、今僕達は、お互いに密着している状況だ。何で女の子ってこんな良い匂いするん?それに体柔らかいな……って何考えてんだ僕は。
「すぅ……すぅ……」
そんな一人で悶々としていると、隣から寝息が聞こえてきた。……どうやら眠ってしまったようだ。無理もない。年齢でいうとレイは中学生くらいだ。そんな子が、こんな遅くまで歩いたのだから、疲れるに決まっている。むしろ、ここまで弱音も吐かず付いてきてくれた事に心から感謝した。
「僕も寝るか……」
一人で悶々としている自分がバカらしくなり、布団を被り就寝する。僕も疲れがたまっていたのか、すぐに眠気が襲う。あぁ、やっぱり寝ている時が一番幸せだ……等と感慨深く思いながら眠りについた。
◇ ◇ ◇
チチチッと小鳥がさえずる音を聴きながら、僕はゆっくりと目を覚ます。僕はこの起きた時の微睡みが結構好きだ。まだ少し眠いし、二度目でもしようかと布団を被り直す。
パッパパッパー!!
しかし、外から聞こえてきた盛大なラッパの音に強制的に眠気を吹き飛ばされた。レイも同じなのか、むくりと起き上がり、右目をくしくしと擦っている。可愛い。
「何だよ……」
静かな朝を邪魔された僕は、ラッパ音に怒りを感じ、ラッパ音の原因を知るために窓の外を見てみると、何やら道路の端々に兵隊らしき人達がラッパを片手に、ずらりと並んでいた。街の住人達は心底迷惑そうに家の中や、道の端などでその光景を見ている。
僕達は、必要最低限の荷物だけ持ち、宿屋の外に出る。間近で大勢のラッパの音を聞くと、思わず耳を塞ぎたくなるほどうるさい。近所迷惑どころか街迷惑も良いところだ。それでも、街の人達は文句の一つも言わずに、ただただ見ているだけだった。その事に不思議に思い、近くで顔を
「あの、これ何ですか?」
「何ですかって……あぁ、他所から来た人か。これは
「王様……?」
「ほら来た……」
おじさんの視線の先を見てみると、そこには肥えた豚のような王様がいた。
「あれがこの国の王 グリンス・ミラス様だよ」
おじさんは口では様付けしているが、表情から王の事を慕っていないのは明白だった。当然だ。僕だってあんな王を敬うなんて御免だ。
「でも、何であんな小さな女の子ばかり……」
「王の趣味だよ……。本当に悪趣味な……」
この時点で僕の王への印象は最悪だった。王が僕達の前を通り過ぎ、しばらくすると兵隊達も退いていき、街は昨日と同じように穏やかな雰囲気になった。人々もぞろぞろと散っていき、話し声や喧騒で賑やかになった。
「なんか……朝から気分が悪くなったね……」
「……うん」
朝っぱらから、あんな王を見せられて良い気分にはならない。だから、僕達は気分転換に街を散歩する事にした。まだこの街をゆっくり見て回っていないし、良い機会だろうと思ったからだ。その時、微かにレイが嬉しそうだった。買い物が好きなのかな?と少しほっこりした。
◇ ◇ ◇
「……どこ行きます?」
「そうだな……まず武器屋に行きたいかな」
流石にレイの剣だけでは心許ないし、そもそもレイに無理はさせたくない。自分専用の剣を持っていた方がいいだろう。レイにも、護身用に何か持たせたい。レイも反対せず、コクっと小さくうなずく。
武器屋に行くがてら、適当にぶらぶらと街を歩く。歩ってみて感じた事だが、この街は意外にも大きい。流石は王国って感じだ。色々見て回っていると、ようやく武器屋を見つけた。武器特有の鉄臭い臭いや、火床から漏れ出いている熱気を感じた。
「いらっしゃい!」
武器屋に入ると、店員の威勢のいい声が聞こえる。武器屋の中を見渡すと、色々な武器が壁や棚に飾られていた。値段も確認する。レイによると銀貨20枚らしい。……微妙に値が張るな……などと思いながら、値札とにらめっこしながら、悩みに悩んだ末に、僕はロングソード、レイには短剣を買った。……これからは節約しないとな……。
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