2章 ミルの国編

第11話 スキル

「さて……これからどうしよう……」


 強くなると決心したのはいいけど、具体的にどうするかはまだ未定だ。そもそも、この世界の事をまだ何も知らない。通貨、常識、歴史……知らなければいけない事は沢山ある。かと言って、レイちゃんに全部聞くのはな……年下にあれこれ教えてもらうのは、なんか威厳が損なわれる気がする……。


「あの……隣に少し大きな国があるので、とりあえずはそこに向かいませんか?」

「大きな国か……そうだね。行く当てもなかったし、そこに行こうかレイちゃん」


 国と呼ばれる場所なら図書館等があるかもしれない。そこで色々な事が分かるし、行ってみる価値はある。それに、あまりレイちゃんにも無理をさせないためにも、新しい剣を買わないと……。あ、お金持ってない……どうしよう……等と色々考えていると、レイちゃんが不満そうな顔で袖を摘んでいた。


「えっと……どうしたの?」

「………レイ」

「へっ?」

「……レイって呼んで!」


 どうやら、僕がレイちゃんを『ちゃん』付けで呼んでることが不満らしい。子供扱いされてると思っているのだろうか?そういう事が気になる年頃って事か。


「分かったよ、レイ。これからよろしくね」

「……はい!えっと……私は剣で、拓様はその持ち主だから……ご主人様?」

「やめて!年齢的にそれはアウトだから……!」


 なんとか拓様で妥協して貰ったが、レイは不満そうだった。だが、これだけは譲れない。僕にはそんな趣味はない。ロリコンではないのだ……!そんなやりとりをした後、ようやく国に向かう事にした。どうやらその国は、この村から東の方角にあるらしい。


「あ、拓様!ちょっと待ってください!」

「ん?」


 レイに呼び止められ振り返ると、茂みの中で何やら採取していた。見ると、どうやら草や葉等を摘んでいる。


「何しているの?」

「……薬草を取ってるんです。少しでもお金の足しになればと」


 なるほど、確かに薬草などは売れば金になる。無一文の今は、貴重な収入源になるだろう。確か、神様は魔物がいるって言ってたな……。ゲームの知識が通用するなら、その魔物の素材も金になる。


「レイは薬草とかに詳しいの?」

「……いえ、私は『鑑定』のスキルがありまして、『鑑定』を通せば、どの草が薬草なのかが見分けられるんです」

「スキルとか……マジっすか……」


 まさか、この世界にスキルなんて概念があるとは……ますますゲームっぽいな……。しかし、スキルには興味がある。これからの戦闘に役立つスキルとかもあるかもしれないし、知っておいて損はないだろう。


「スキルってのは、誰にでもあるの?」

「……基本的には。スキルはステータス用紙に記されるので、それで確認するんです。しかし、多くの人は戦闘向きのスキルではないんです……。……冒険者等が特別なんですよ」


 ……戦闘用スキル少ないのか……。まぁ、でも役立つスキルとかあるかもだし……うん。少しスキルへの期待が減ったが、スキルを会得するという方針には変更ないかな。てか、サラッと言ってたけど、ステータスなんて物もあるのか……。ステータス用紙か……。名前からして紙でステータスが確認が出来るのかな?


「まぁ、分からない事だらけだけど、国に行けば分かるだろ」


 国には沢山の人がいる。自然と常識とかは身につくだろう。そこは、言い方はあれだけど『ノリ』で頑張っていこう。下手に考えても混乱するだけだし。


「さて、行こうか」

「……はい!」


 やっとの事で、僕はレイの村から出て東の方角に向かう。舗装はされていないが、ちゃんと道もあるし迷う事は無いだろう。


 ーー数時間後ーー


「迷った……!」


 何故だ!?道なりにずっと来たはずなのに、森に入ったと思ったら、途中から道がなくなった。その時点で気づいてれば良かったが、道なりだし、レイもいるからと安心しきってたのが災いした。


「まさかレイもその国に行った事ないとは……」

「ごめんなさい……」


 レイはシュンとする。レイは悪くないが、この状況は非常にまずい……。元の道も見失ったし、夕陽が沈んで空は茜色に染まり、視界が凄く悪い。これ以上歩くのはとても危険だろう。かといって、野宿するつもり等なかったから野宿の準備もしていない。というか、野宿の仕方をしらない……。


 ガサガサッ


「「!?」」


 突然草むらが揺れ、瞬時に神経を尖らせる。男と仮面男との闘いで少なからず周りを警戒するようにしていた。この世界では弱い者は死んでいく……そんな残酷な現実を見せられ、まだまだ未熟な自分が生き残れるとはとても思えなかった。だから、せめて気配や物音に敏感に反応して、危ない道等は迂回してレイはもちろん、自分を守るようにしてきた。レイの『氷の剣』を使えば、魔物程度なら余裕そうだが、レイに負担がかかるため、あまり使いたくない。


「…………!」


 息を呑み、草むらに潜んでいる”何か“に警戒する。いつでも逃げ出せるように左手でレイの手を握り、右手で木刀ぐらいの木の枝を構える。そして、草むらから“何か”が現れた。


「ほぇ?お兄ちゃん達何しているの?」

「……………子供?」


 草むらから現れたのは、両手で木の実が沢山入っているカゴを持ち、瞳が左右違う色をした小学生くらいの女の子だった。









  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る