普段使い

 妻が働き始めてすでに二年が経つのに、その職場へ一度も行ったことがない。自宅から歩いてすぐにあるレトロな雰囲気のカフェは、若い女の子達が好むような可愛らしさを感じる店で、一人静かにロックグラスを減らしてく店にこそ自分のようなおじさんは行くべきだと、妻の働いている姿を見ようともしなかった。けれど、ふと、何かのきっかけはおそらくあるのだろうが、それを探ることは後にして、お腹の空いた体は仕事帰りにそのカフェへ向かった。錆びきった鉄骨の剥き出しと大きなガラス窓の店内へおそるおそる入ると、満席の店内で機敏に働く見慣れた残像は、驚くことなく自分を一瞥すると、忙しいからまた今度にして! ああっ、家と何も変わらないじゃないか。

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