第55話 遭遇
俺は戦っていた。いや、いる、か。
何と戦っているかって?
それは目の前の脅威からだ。
比較的平和な夜はすぐに終わり、日中がやってきた。
平和な時間は流れるのが早い。あっという間にシンジロウさんとのやり取りから24時間が流れていたようで、俺たちの目の前にシンジロウさんがいる。
加恋はというと、時折むにゃむにゃ程度の寝言を言っているので、もうじき目を覚ますのだとは思う。思うが、残念ながらまだ目を覚ましてはいない。
俺たちが警戒心むき出しでシンジロウさんを見ていると、シンジロウさんはにやりと凶悪に歯を出して笑った。
シンジロウ
さて、どうしたものか。
とりあえずにやりと笑ってみたものの、ここから先のセリフが思い浮かばない。
きっとこいつらはこの笑顔に心底怯え、警戒しているのだろう。
俺に余裕すら見えているかもしれない。
それはありがたいことだが、同時に面倒くさくもある。
さっさとこちらの思惑に気が付いてほしい、そういう気持ちがあるのだ。
だが、ここにいるメンバーの中で恐らく一番頭の切れる夏樹がそれに気が付いていない時点で、その可能性は絶望的だ。
諦めて素晴らしい演技をするとしよう。
「よおお前ら。案外わかりやすい場所に隠れてたんだなあ?」
「……」
「つうか加恋寝てんじゃねえか。よっぽどひどい傷を負ったんだなあ。ったく誰だよ一緒にいたのは。女子を守ってやれないなんてどうかと思うぜ、俺ぁ」
反応はない。
ああ、本当に面倒くさい。
会話ができればどうにかなると考えていたってのに。
しょうがない。
ここはいっちょ力を交えた方がよさそうだ。
そして俺は力を全開にこいつらに突撃していった。
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