第45話 思惑
「ふうーっ」
夏樹と春樹が部屋から出て行って数分後。
シンジロウは大きな溜息をついた。
夏樹が予想外のことに突っ込みを入れ、そこからさらに予想外な内容に話が発展していったのだ。
そしてシンジロウは、普段は頼れる大人という体でいるが、実際のところはそうではない。
突然のことなどの対応は特に苦手としていて、たくさん頭を使うため、ことが終わった後はいつもすぐ疲れるのだ。
「(なんか思ってもない方向に進んでいったが、まあみんなの成長につながるだろうしほっといても大丈夫そうだな)」
まず、夏樹とシンジロウとの会話にはいくつか間違いがある。
シンジロウが春樹に力の練習をさせない理由。
そこには少なからず、本番で自分が生き残るためというものも含まれる。
が、無理に春樹や星也、加恋を殺して自分が生き残ろうとは考えていないのだ。
では何故そう言わなかったのか。
単純に、夏樹の剣幕に気おされたというのもあるのだろう。
それに加え、突然発生した、春樹たちへの向上心なども理由の1つであるといえる。
シンジロウは全員で生き残るのが理想的だと考えている。
自分がどうしても生き残りたいわけではない。できれば生き残りたいという気持ちがやや強いだけだ。
そのために、全員の柔軟性、考える能力の向上も、もう少し必要だと考えていたのだ。
が、その方法が見つかっていなかった。
そこに期せずしてチャンスが訪れた。
それを利用することにしたのだ。
話しているうちは名案だと思っていたものの、今になって考えてみるとどうだろうか。
全然名案ではないということに気が付く。
まずこれからおそらくは逃げる道を選んだであろう奴らを追いかけ、演技をしなければならない。
いっそ探さないという手もあるのだが、それはそれで疑われそうだ。
そして、これが解決したとして、その後も少なからずシンジロウには疑いの目が向けられ続けることになる。
一度できてしまった疑念は、そう簡単にはなくならないものだ。
ここまで一通り考えたシンジロウは、自分の馬鹿さを嘲笑するとともに、もう1つ、特大の溜息を吐いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます