それでも愛せますか?
寂尊・D・世良
第1話
序章
ひぐらしが鳴く。夕焼けが駅まで続く一本道をオレンジ色に染める。
世間では、夏休みの時期。
最初のメールが届いてから1ヶ月が経っていた。
ズボンの左ポケットに入れていたケータイが着信音とともにバイブレーションする。
これで4通目。
次こそは。
消えかけていたマッチの炎がもう一度力強く輝くように希望の念を燃やした。
慣れた手つきでケータイを操作する。
画面がメールボックスを開く、宛名は『柊
画像が添付されているのもこれまでの3通と同じだ。
夏の夕方。夏休みのこの時間、駅まで続く道は人の通りはほぼない。
1人夕陽をバックに熱を冷ますように風が吹く。
木々は風に揺らめき夏ならではのサウンドを奏でる。
ボタン1つ押せばメールは開ける。
が、結城
躊躇っているのだ。メールが届いてから結城 将司の日常は変わった、それも劇的に。
行ったことのない街、関わることのなかった人達との出会い、知らない世界へ歩むにつれて知る彼女の軌跡。
それもこれで最後。
表情は泣きだす前の子どものようになっている。
終わってほしいようで、終わってほしくない。歯痒さで下唇を噛み締める。本当に泣き出す前のようになってしまっている。
これまでの日々を思い出す。
彼女を助けたい。その一心だったのが、いつから彼女を知りたいに変わったのか。
あの日の彼女が何故泣いていたのか。
今の自分は、何を想い、何を願うのか。
『それでも愛せますか?』
彼女の言葉が脳内でリフレインする。
泣き出す前の子供のような表情をした彼女の顔とともに。
それでも愛せますか? 寂尊・D・世良 @jack_d_sera0522
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。それでも愛せますか?の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます