第3話 贈り物

「ビル、この本には何て書いてある、訳してくれ」

「いいけど、長くなるよ」

「どのくらいだ」

「結婚式の時の、おえらいさんの挨拶くらい」

「知らなくていい」

「うん、それが妥当」

まあ、どうせ知っても+にならんだろう。


「でも、どうして49Pにいたんだ?」

「四苦八苦」

日本人じゃないのか?この悪魔・・・


「で、いいことって何だ?」

「えへへ、もう少し渡してるけどね」

「何を?」

「君は、人と話したの、いつ以来?」

「さあ、忘れた」

「そうだよね。そんなに昔だよね」

「悪かったな」

ずっと見てたのか?もしかしたら、こいつは凄いんじゃ。


「君は、話相手はいなかった。だから私はあるプレゼントをあなたに与えた」

「何を?」

「会話だよ」

「会話?」

ビルは頷く。


「いい太郎」

急に真剣になる。

「君は、1人でいるのに慣れている。心の中でそれでいいとウソをついている」

「ビル・・・」

「太郎は、本当は人一倍、人の温もりを求めている。それは、悪い事ではない。でも・・・」

「でも?」

「君が見ているのは、上でも前でも後でもない、一番行けないところ」

「それは?」

「君自身も気付いている場所、それは下だよ」

「下?」

「うん」


ビルは、凄いのかもしれない。


「でも、いきなりは荒療治だよね。だから約束して」

「何を?」

「1日5分でいいから、前を見て」

「前を?」

「うん、前を・・・さっき私と喧嘩したけど、それがいい意味で君の姿」

「僕の?」

「君なら、出来るから、応援してるよ」

ビルは悪魔ではなく、天使かもしれない。

だから、悪魔としては、5流なのか?


「じゃあ、私はこれで、ひとまずお別れね」

「ビル・・・」

「じゃあ、応援してるよ」

そういうと、本は消えた・・・


ビル・・・

わずかな時間だったが、とても有意義だった・・・


確かに、ビルの言う通りだ。

少しでいいので、前を向こう・・・


えっ、さっき「ひとまず」と、言ったな・・・ひとまずと・・・


翌日・・・


担任から衝撃の発言があった。

「えーと、突然だが、今日から新しいお友達が加わる。

女の子だ。みんな仲良くするように・・・」


すると、かわいらしい女の子が入ってくる。


「岩隈美留です。みなさん仲良くしてください」

男子から、歓声があがる。


「び・・・ビル?」

僕は思わず声にでた。


「太郎くん、逃がさないわよ」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

一番素敵な宝物 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る