第2話  ビルという名の女の子

家に着く。


「ただいま」

「お帰り」


母さんに挨拶をして、自室にこもる。

悪い事しているわけではないのに、なぜか罪悪感がある。


鞄から、先程買わされた、魔法辞典を取りだす。


(ちょっと、買わされたって何よ)

(えっ、私が無理やり買わせたみたいじゃない)

そうだろうが・・・


たく・・・

女っていうのは、扱いにくい。


確か、49ページだな。

「やっほー」

「言葉に出るんだな」

「うん、もう平気だよ」

「それは何より。では」

本を閉じようとする。


「こら、閉じるな、話を聞け」

「へいへい」

本の中の、自称(今時の)悪魔が、嘆願してくる。


「改めてご挨拶。私はビル、あなたは?」

「太郎」

「古臭いね」

「親に言え」

「だって、本当に古いんだもん」

「燃やすぞ」

「うそうそ、素敵な名前だよ」

全国の太郎さんに、謝れ。


ビルだって、まんまデビルだろと、言おうとして止めた・・・


「で、さっき無駄じゃないと言ったな」

「うん」

「何をしてくれるんだ?」

「何にも」

「何にもって、何も出来ないのか?」

「うん、私5流だもん」

「5流?」

「だから、この本に閉じ込められた」

正解だな、その人・・・


「でも、本当に無駄じゃないよ」

「えっ」

「私と言う、素敵な彼女が出来たじゃない。あなたいないでしょ」

「余計なお世話だ」

本当に燃やそうか・・・この本・・・


「なあ、ビルさんとやら・・・」

「ビルでいいよ」

「ビル、この本何語だ?」

「悪魔語」

「悪魔語?」

「うん、だからこの星の生物は、誰も読めない」

「でも、お前は日本語話してるな?」

「ずっといたから、覚えた」

「あっ、そう・・・」


ちょっとまて・・・


「お前いくつだ?」

「女の子に歳訊くな」

「訊かれて困る歳なのか?」

なにも言わない、図星のようだ・・・


まあ、見かけは16歳くらいか・・・


「とにかく、待ってて」

「えっ?」


「絶対に、私を買った事を、後悔させないから」

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