三
そんなとき、側仕えのものから、阿片をすすめられた。
「吸うと廃人になるものでしょう?」
はじめて聞いたとき、私は小さく叫んだ。
その彼は、
「吸うと、何もかもを忘れられますよ?」
と言った。
「私も吸っていますが、普通でしょう?」
とも。
確かに、その彼は廃人には見えなかった。
吸うと楽になるという言葉と、好奇心から、私は、彼の持っていた筒に手を――。
そっと吸うと、確かに気持ちが少しだけ、楽になった気がした。
それからだ。
辛い気持ちになると、彼の持つ筒に手を伸ばし、煙を吸うようになったのは。
だんだん、阿片の見せる夢の時間が長くなっていく気がする。
それが恐ろしかった。
でも、その夢の甘美さから逃れることはできなかった。
筒を持つ彼に、抱かれたのも、夢うつつの中だった。
皇帝は私を抱いたことはなかったから――、その行為は初めてで。
でも、阿片を吸ってからのその行為を拒むことはできなかった。むしろ、溺れた。
1934年、夫が満州国皇帝となると、私も再び皇后になった。
夫との仲は、冷え切ったままだった。
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