二
1924年のいわゆる政変で、皇帝や私たちは紫禁城を追放された。
今まで、王朝は否定されても、紫禁城に住むことは許されていた皇帝は、一人ではなにもできなかった。
日本以外の各国の助けを得ることもできず、国内を移転していく中、今まで宮と宮で離れた生活を送っていた皇帝との密接な日々が嬉しい反面、近くにいるようになった淑妃の存在は、私をいらだたせ、苦しめた。
私は表でも陰でも、彼女に嫌がらせをした。
彼女の存在そのものが、私には許せなかった。
それが、皇帝への愛だったのか、皇后だった私の矜持からだったのか、両方が原因だったのかもう、よくわからないけれど。
そうして、淑妃は、私たちのもとから去っていった。
そして、皇帝との離婚申請を裁判所に起こした。
私は皇帝(正確にはもと皇帝だが)のただひとりのきさきになったけれど、その頃から、皇帝との間がうまくいかなくなった。
皇帝はもともと、女性には興味はなく、私のことも『皇后である身近な女性』としか見ていなかった。
皇帝は、外の世界に憧れていたのに、実際に宮外に出ると、自分が何もできないと知った。そして、復位を考え始めた。
我が国に勢力を伸ばしたい日本国と利害が一致し、連携する中で、離婚という皇帝の体面を汚すきっかけを作った、私を許すことができなかったのだろう。
そんな彼に、私も、気持ちが冷めていくのがわかった。
私はきっと、自分が失った(と思っていた)外の世界への羨望を熱く語る彼を愛していたのだ。
だが、体面を保つために、泣いて訴えても、離婚は許してはもらえず。
淑妃のように、彼のもとを出ていく勇気もなかった。
体面を保つために、外では仲のいい夫婦を演じ、笑いあう。
中では言葉も交わさない夫婦。
段々、私は自分が疲れ、壊れていくのがわかっていた。
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