第28話
続々と現れ続ける夕食と義久さんの催促を何とか乗り越え、一息をついていた。
「やはり年頃の男は、よく食べて良いのぉ」
鬼のように食べ物を勧めてきた張本人が満足そうに笑う。
「すみませんでした、急にご馳走になって」
「別に構わんさ。…ところで、料理はどうだった?」
義久さんは返事が分かり切っている質問を僕に投げかける。
「美味しかったです」
「と、ユウ坊が言っているぞ、愛紀」
ニヤニヤとした表情の義久さんが開いたばかりの襖を見る。
そこには顔を少し赤らめた料理人が立っていた。
「あ、愛紀。美味しかった。ありがとう」
「ユウトの口には勿体ない料理だったでしょ?」
一瞬固まった愛紀だったが、すぐにいつもの調子に戻る。
「それにしても愛紀は本当に料理が上手かったんだな。まさかここまでとは思っていなかった」
「馬鹿にしていたの?」
愛紀の表情は笑っているが、その背後に怒りのオーラが漏れ出した。
「いつも大変美味しい手料理を振舞っていただき、とても感謝しております」
「よろしい」
愛紀はフンと胸を張った。
その後、愛紀の後片付けを手伝い、義久さんと三人で軽く談笑をし帰路についた。
二人は僕の姿が見えなくなるまで見送ってくれたようだった。
陽は既にどっぷりと落ちて暗闇の広がる田んぼ道と街中を唯一人、自転車のライトだけで駆け抜けた。
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