第17話 鑑定屋4

見送る鑑定屋を背に、僕と波留は坂道を下っていった。


風に吹かれた波留の表情は不機嫌そうだった。

「あの店主はやっぱり嫌いだわ」

お目当ての物は買えたらしいのだが、鑑定屋に散々手玉に取られてしまったのが悔しかったようだ。

「そう?割と良い人だと思うけれど」

「騙されないでよ!あんな何を考えているか分からないやつ、信じて良いことなんて何もないわよ!」

「そこまでか?」

「そこまでなの!」

だが、波留の言うことも僕は分かっていた。

鑑定屋の話術はとてつもなく上手い。

彼は誰にでも話を合わせることが出来た。

そして会話を楽しんでいる内に、いつの間にか彼のペースに乗せられてしまい上手く言いくるめられてしまう。

僕たちに信頼感と疑念を丁度良く振りまく。

その点が疑い深いこっち側の人間には、危機感を持たせる。

というか、怪異に関わる人間しか来ない店の店主がそんなので良いのかとも思うが…。

まあ、どうにかなっているのだから、まだ営業を続けられていられるのだろう。


「私自身、お父様やおじい様から耳にたこが出来るくらい信用するなって言われているのよ」

「それこそ偏見みたいなものじゃないのか?」

「でも、何も害がなければそんな話にはならない訳で、昔四家と鑑定屋の一族との間に何かがあったらしいのよ」

波留はあまり関心が無いように語る。

「ただ、その話が伝わっていないの。ただただ、鑑定屋を信じるなーみたいな感じでさ」

「よく分からないな、それ」

「そうなのよね。ま、それでも人を食ったようなあの性格は好きになれないわね」

「そのうち分かりあえると思うけれどな」

「そんなのは一生、いや末代まで無理ね」

と、波留は腕を組み、鼻を鳴らした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る