第7話 あいきゃん のっと ふらーい
『宿主だ!』
猫の方を振り向く穂奈美と、立ち上がる周防。
早くしろと、繁華街のほうを指差した腕を振る二匹。
「先生、行きましょう!」
周防が指を咥えてシナを作るようなぶりっ子ポーズをとり、手にしたステッキを回転させると光る粒が飛び散る。ステッキは回転させる度に大きくなり、最終的には中型バイクほどの大きさに変わった。
おそらく魔法少女としては周防のほうが穂奈美より先輩なのだろう。堂に入った魔法少女ぶりに感嘆の声をあげる穂奈美の前で、周防がステッキに跨り浮遊した。
「先に行きます。先生も早く」
ステッキに好真が飛び乗り、自分にしがみ付くのを確認すると、周防は繁華街へ向って猛スピードで飛翔を開始する。
「君らは来なくていいよ。僕らだけで十分だからさ」
周防にしがみ付いたままの好真が、穂奈美たちへ振り向き、チェシャ猫のように真っ赤な口を開け、あからさまにバカにした表情で舌を出して笑う。
「穂奈美急げ!俺達も行くぞ!」
飛び去る周防たちに石を投げて時宗が吠える。
「行くってどうやって?」
「あたし魔法なんて教えてもらってないよ!」
時宗は舌打ちすると、地団太を踏みながら歯軋りした。
「先に教えておくべきだった。くそ!バトンを回転させて放り投げ、右回りに回転してキャッチすれば飛行形態になる!」
「わかった」
頷いてバトンを回転させると、周防の時と同じく光の粒が舞い散り、キャッチすると同時に大型化する。
「操作は?」
バトンに跨り、自分にしがみ付いてきた時宗に聞く。
「基本は思考と視線によるコントロールだ。慣れない内は思考誘導で飛べ!飛びたい方向にいける!」
唇を一舐めし、初めて自動車やバイクのクラッチを繋ぐ時のような緊張を感じながら、バトンへ飛べと念じる。その念を受けると同時に、バトンは超低空を河に向って突撃を開始した。
刹那的な感覚で接近する水面に、穂奈美は声に鳴らない悲鳴をあげ、時宗は罵り声をあげた。
水面を水切りのように何度も跳ねながら突き進み、一度深く水中に潜ると水柱を上げて上空高くへ、打ち上げとでも呼べる勢いで舞い上がる。
ずぶ濡れになり、時宗は気管に入った水に咽て咳き込みながら悪態をつく。
「下手くそ!いきなりアクセル全開な奴がいるか!」
「しょうがないでしょ!初めてなんだもん!でも、なんとなくわかったわ」
微妙にふらつきながらも、確実にコントロールしつつ繁華街へ穂奈美たちが飛び去った後、倒れていたクローバー男が頭を振りつつ起き上がり、キョトンとした顔で周囲を見回した。
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