第6話洞窟探検隊
窓から差し込む光がプリズムして虹色だ。
今日も異世界で目覚めて背伸びをした。
前回は石版と言う便利な物があるのを知った。
部屋にある石版の1つを手に取って睨んでみるが何も反応は無い。
それに刻まれた文章もどうでもいい事ばかりだしな。
兎に角、洞窟と石版について情報収集かな。
〜ギルドにて〜
ガヤガヤ、、
中々盛況だな。受付のお姉さんの前も数人並んでいる。
列に並んで周りを見渡すとパーティを組んでる人達も多いな。
ソロプレーヤーみたいなのも多いけど、狩猟などは、やはり
パーティを組んだ方がハントが成功し易いかな。
受付の順番が来た。
『こんにちは。洞窟探検に行こうと思っているのですがパーティを組んだ方が良いですかね?』
「……あぁ、それでした洞窟の入口に係の者が居りますので、そこで他の方と組ませてくれますよ」にこり。
??
受付の清楚なお姉さんが清楚な仕草でメモにペンを走らせ、洞窟の場所を手書きの地図を書いて貰っているのをほんわか眺めた。肩まわりが露出した服を着ている。
メモを受け取る。
『ありがとうございます』
ニコッ。爽やかな笑顔が返ってきた。
洞窟の場所は意外と近いな。
装備を整えるために武具屋に寄って行くか。
〜武具屋にて〜
身長2mはあろうか筋肉ムキムキのマッチョがそこには居た。
金髪のモヒカンでノースリーブの服で腕の筋肉を出している。
俺を見掛けると
「いらっしゃっい!何か必要かね?ゆっくり見て行ってね」
と見た目と真逆な丁寧な口調だ。
店の奥から「店長〜、この在庫、、」と声がする。
「補充しといて」金髪モヒカンが答える。
店長だったのか。
「あ、その刀、君が持っていたのか」店長
『その、人助けをする時に成り行きで持っていっちゃたんです……はい』
刀を腰から外して店長に渡そうとすると
「良いよ、良いよ、誰かの役に立ったんでしょう?それに鶏肉美味かったし」ニコリ
『そうですか、、』照れっ
刀を腰に差し直した。
店員が出て来て「その刀はどうしようかと思っていたんですよね〜、飾ろうにも店の雰囲気に合わないし、売ろうにも値段が分からないし」
『良い刀だよな?
「はいはい、、」
『でも腕が名刀の持ち腐れだな。鶏と戦った時は剣の腕が無くて切れ味を引き出せなかったからな』フッ
「模造刀だからな」と店長。
、、ぶっ
、、、ぶぶっ
、、。。。ぶはははは!!
店員が噴き出しやがった。
「模造刀ってアンタ、模造刀で戦ったのか!!刃の無いヤイバで戦ったのか!あははは!」
店長は横で優しく微笑んでいる。
カー!!顔が紅くなる。
「ははははは、ハッハッ……それで?今日は何と戦おうとしているんですか?」
『洞窟に、行こうと思って』
「アハハハハ!」
シュン
「あ、洞窟ね、ハイハイ」と店員が馬鹿にしたように言った。
「洞窟は運動不足を解消する娯楽施設みたいになっているよ」と店長
『そうなんですか!、、でも石版が無いと学びたい事が学べないので、、』
「あぁ、ウン、、」
さっきとは違って二人共、何故か顔を背けている。何か恥ずかしい事でも思い出したか?
「洞窟に行くなら動き易い皮の鎧がいいね。それに袖が無い方が崖を登ったりするのに向いているよ。引っ掛かるから髭も剃った方が良いね」
『そうですか、そうします』
チャラララ〜ン、ジャン!
城壁に居そうなザコ足軽ファッションに着替えました。
機能重視だからしゃ〜ない。
90歳の足軽って、、
目的の為には少々の事には目を瞑ろう。
皮の鎧の料金を支払って洞窟に向かった。
店長が店を出る時にコッソリ教えてくれたけど、模造刀でも素材の鉄は本物らしい。
研磨すれば斬れ味鋭い刀に成るそうだが、腕が未熟な内は刃で自らの手足を切る事があるらしいので、そのまま刃の無いまま使って腕を上げた方が良いとの事だ。
川沿いの道は白い石を積んで通路の壁と床に使用されていた。
のんびり歩くのに良い遊歩道だ。
所々に木が植えられており葡萄が実っている。
〜洞窟にて〜
目当ての洞窟は川沿いにあった。鯨だ!大きい。
高さ20m幅20m以上はありそうな大きな鯨が口を開けていた。
洞窟型アトラクションか?遊園地みたいだな。
洞窟の鯨のそばに小さな小屋が建てられており受付と書かれていた。
小屋の周りには冒険者用のテーブルや椅子が並んでいて喫茶店になっているみたいだ。
蝶ネクタイをしたウェイターがコーヒーを運んでいる。完全に娯楽施設だな。
筋肉マッチョから、普通の体型の奴、痩せてガリガリの奴まで居る。
筋肉マッチョの奴はデカイ剣=バスターソードをテーブルに立て掛けていた。
あんなデカイ剣が実戦で役に立つのか??
受付のお姉さんは赤い制服に赤い円柱の帽子。
某デパートのエレベーターガールみたいな服装だった。
順番が来て受付で1,0000Lを支払って名簿に記入した。
10分待つと他の2人とパーティを組む事になった。
「俺はダイキだ。それでこっちはヒロキ。よろしくな」
『俺は仙だよろしく』異世界で名乗っている名前にした。
「ひ、ヒロキです。よろしくお願いします」
ダイキは普通の若者で少し体格が良いぐらいだったけど、ヒロキはナヨナヨしてて育ちの良い坊ちゃんみたいだった。男とは言えこんなに気弱だったら暗闇で何かされちゃうんじゃないか?
ダイキは西洋の剣でヒロキは杖を持っていた。
「それでは出発です。こちらに立ってください〜!」受付のお姉さんに促されて立った場所は岩肌の壁の前だった。
ガコン!お姉さんが地面から生えている大きいレバーを倒すと
ゴゴゴゴゴ、、と音を立てて岩の壁の一部が横にずれたり、上下に動いたりして仰々しく岩の壁が開いた。
ぽっかり空いた穴の奥からは何か悲鳴が聞こえる「ひゃー!」「きゃー!」
ヒロキはダイキの後ろに隠れようとする。
「ほら行くよ」ダイキに促され渋々出発した。
「探検用の魔法のライトをどうぞー!」
お姉さんにトーチライトを渡されて歩き出した。
このライトは魔法で光っているらしい。今度分解して中身を調べてみるか。
「行ってらっしゃいませー!」
ゴゴゴゴゴ、ガン!背後で岩の壁が閉まる音がした。
先頭はダイキ、ヒロキ、俺はしんがりだった。
洞窟内は白い岩だらけだ。洞窟内は涼しい。
進んで行くと最初の別れ道に出た。
細い方と太い道だ。
細い方を無言で指差して行ってみる事に。
曲がると白い植物が沢山生えていた
「うわぁ!何かある!」
ビビリ過ぎだろ、叫び声の方が怖いわ。
行き止まりだったので引き返して太い方の道に進んだ。
警戒しながら進んで行くと
人型のモグラのモンスターにいきなり遭遇した。
手には銀色に光る武器とヘルメットを被って腹巻をしている。
その瞬間にダイキは持っていた剣で襲い掛かった。
『あ、待て、、』静止する暇もなかった。
ガチン!モグラはスコップの武器で攻撃を受け止めた。
ドン!体当たりでダイキを吹っ飛ばした。
吹っ飛ばされたダイキは影に居た大きい食虫植物の触手に絡め取られてしまった。
ヒロキは腰を抜かしている。
モグラモンスターが俺にターゲットを移し、殴り掛かってきた。
抜刀し待ち構えて刀でスコップを受け止めた。
ガイン!
スッ
スコップとモグラの間に刀を入れ、
ガランガラン〜!
それでも闘志を失わず
『面!』
バカッ!ヘルメットが真っ二つに粉砕してモグラの化け物は倒れた。
食虫植物を見るとダイキがウツボカズラのデカイやつに喰われようとしている。
「うわ〜、離せ!離せよ〜!」ヒロキが泣きながら杖で魔法を使いながら助け様としている。
バ、バ、バン!バン!
「このクソ、クソ!」暴れるダイキ。
パクン!
あ、喰われた。
ヒロキは杖を投げ捨てグシャグシャの表情で触手に掴み掛かっている。
「うわ〜!溶かされるー!あ、熱、、、くない」
ん?
「ベチャベチャするだけで何とも無いぞ〜?アレッ、アレッ??」
『落ち着け!取り敢えず
ヒロキは相変わらず泣いてパニくってる。
右上からヒョロヒョロ〜と迫り来る触手を刀で払い除け、
左下からヒョロヒョロ〜と迫り来る触手を刀で思いっきり叩いてやったら
触手は伸びて来なくなった。
ウツボカズラの植物のわさわさした感触を我慢して
ヒロキがダイキの服を掴んで引っ張りだした。
意外と行動力とパワーがあるな。
はぁはぁはぁ……
何とか安全な所まで離れられた。
さて問題はコイツだな。
気を失って倒れているモグラに水筒の水を掛けてやった。
パシャ!
『大丈夫か?』
「……」
『すまなかったな、連れがいきなり殴り掛かって』
「いえ、こちらこそすいません、殴り掛かってしまって」
『何となく解るけど、、』
「はい!ワタクシ田辺と申します。洞窟の中のメンテナンスをさせて頂いております」
ダイキが口を開けて呆気にとられている。驚いている。
モグラの田辺は茶髪のパーマで見た目ヤンキーの兄ちゃんなのに話すといい奴だった。
〜小1時間経過〜
「〜なのでおばちゃんに薦められるまま生命担保に入ったんですよ〜」
(こっちで言う生命保険かな?押しに弱いんだな)
『あ、そうだコレ』
ヘルメットの弁償と迷惑料として10,0000Lの金貨を渡そうとしたら
「いいです、いいです。そんなにしませんから」
と辞退したので半額の5,0000Lだけ強引に渡した。
「それではワタクシはこれで、壁が崩れている箇所もありますのでお気を付けて」
『ありがとう、じゃあねー』
十分休めたので出発する事にした。
少し進むと拓けた場所に出た。他の冒険者パーティも何組か寛いでいる。
上部に赤い魔方陣が描かれている岩を囲んで男達が話をしている。岩は火鉢よりも大きいぐらいだ。
『ここ良いですか?』
「おう、いいぞ」男
マタギの猟師みたいな格好の男達と情報交換をする事にした。
「たいへんだったみたいだな」
緑色の液体でずぶ濡れの姿を見られながらそう言われて
「えぇ、植物のモンスターと戦った時の返り血です」
サラッと嘘を吐くダイキ君、、、何も言うまい。
マタギの一人が水差しみたいなヤカンを魔方陣の上に置いて水筒の水を注ぐと、程無くして沸騰した。
IHクッキングヒーターみたいな物か。
「ここから先はギミックが多いから気を付けろよ」
暖かいスープを渡しながら忠告してくれた。
『あぁ、忠告ありがとう』(ギミックって何だろう?)
今日中に攻略したいので小休止で出発する事にした。
この広場からは行ける穴が無数にあったのでダイキとヒロキと3人で
良さそうな穴を適当に決めて進んだ。
暗がりのトンネルを進んで行く。
曲がり角で右に曲がると
ガコン!ゴゴゴゴゴ……左から大岩が転がって来た!
『うわぁ!』「うひゃあ!」「うわっ!」
驚いて元来た道に二人を押し込んで大岩をやり過ごした。ゴロゴロゴロゴロ、ガシャン!
二人を押し込んだ時にトーチライトを投げ捨てたので割れてしまった。
ゴロゴロゴロゴロ……
ドッドッドッド、心拍が騰がる。
何だありゃ!
どうやらコレがギミックらしい。
暫くするとまたガコン!と音がして左手から大岩が転がりだした。
どうやらタイミングがあるらしい。
3回目に大岩が転がって来た時に3人で決意して無言でコクンと同意し合った。
4回目のタイミングで飛び出した。ヒロキも何とか付いて来ている、ヨシ。
通路と大岩の通り道は十時に交差している。向こうの道に無事着いた。
2つ目は反対の右側からだ。
ここも同じ要領で大岩が抜けた瞬間に飛び出した。
ゴロゴロゴロゴロ
しかし違ったのは此処は安全地帯じゃなかった。
斜め後ろから大岩が転がって来たからだ。
驚いて通路を走り抜けると
広間に出た。大岩が四方八方から転がっている。
「わー」「あー!」
他の冒険者も大勢居て右往左往している。
兎にも角にも壁沿いに逃げた。
混乱でダイキとヒロキとは
ふと横の壁を見ると穴が空いている箇所があってA型バリケードが置いてあった。
工事現場にあるオレンジと黒のシマシマの立ち入り禁止の低い柵だ。
何故か皆、そこには入らないで逃げ回っている。
工事現場に入っちゃいけない事ぐらい子供でも分かる。
でも俺は
後ろからは
出口だ!強い光が差し込んでいる。
カッ!
洞窟から出た!
ザザ〜ン!
青い空、青い海、白い雲、、、大海原だ!現世の海だ!
夢でも見ているのか??
右手を見ると幼女が居てビビッた。
もえちゃんだ!!
制服を着ている。黒い光沢のある靴、ワンポイントの白いソックス、スカート、小さいジャケット、黄色の帽子。
何処の幼稚園の制服かな?両脚を伸ばして座っていて、小さな釣竿を両手で握り締めている。
左上を見ると体育座りで頭を抱えて泣いている男の子が居た。
同じ様に制服だ。この子は確かひかる君だったな。
自分をもえる君だと言っていて、いつも、もえちゃんの後に付いて来ている子だ。
ザザ〜ン
『もえちゃん何をしているの?』話し掛けた。
『おともだちを呼んでいるの』
『その釣竿で?』
『うん』
釣竿を挙げて見せると餌は付いておらず音が鳴る鈴が付いていた。
チリリン
『あ、きた』
ザザザ、ザッパーン!ビチビチ。
水族館で見たイルカショーを思い出す。
ピンクのイルカがもえちゃんの
キュー!キュー!
『わ〜い』
キュー!キュー!
俺は呆気に取られている(コレは夢だな……イルカともえちゃんがキスしている)
「ここに居たのか」
凛々しい声がして見上げると私服のロベルトが木の根を掴んで降りてくるところだった。
私服もお洒落だな。ストライプのシャツにスリムなパンツ、指輪や装飾品も完璧に
「さ、帰るよ」ひかるを右肩に抱え、もえちゃんを左脇に抱えて言った。
ザパァ!イルカが海に帰って行った。
『ロベルトはね天の国の人なんだよ、天使さまなんだよ〜』ともえちゃんが抱えられながら言ってきたが
ロベルトはやんわり否定した「人間だよ。私達も人間だ…」その横顔は少し寂しそうだった。
「この海は美しいな。だが私の故郷の海はもっと美しいぞ」ニカッ
負けず嫌いだな、ロベルト。
ロベルトは子供2人を抱えて崖の横の階段を登って行った。
俺は暫し海に見惚れていたが洞窟に引き返した。
闇の中に戻ると気が遠くなった。
気が付くと壁の前に居た。バリケードも穴も無くなっていた。
「ど、何処に居たんですか!」
『すまん!気を失っていた』
「しっかりしてくださいよ」ダイキが焦りまくっている。
あ、ヒロキも居る。
「んー?」
ヒロキは暫し考えると、、、まるで交差点でも渡るかの様に普通に歩き出した。
!?
「あんまり速く無いですよ、この大岩」
そう言われてみるとそうだな。我に返った。
小走りで軽く
大岩を避けながら暫しキョロキョロして探すと直ぐに地下へ降りる階段を見付けた。
遂に最深部の石版の間に着いた様だ。
20畳程の円形の空間に石版が幾つか並べられていた。
おぉ、、3人から溜息が漏れた。
「やったなヒロキ!」「やった!」『やったな俺達!』「はい!」
早速、石版に触れてみると映像が頭の中に流れ込んできた。
地道に教科書を読んで書き写している人達の映像が、、、
んん!?
コレも真面目に勉強している映像だ。
コレも、コレも。
どの石版を手に取っても地道に勉強している人の映像ばかりだ。
最後に中央にあった石版に触れると
「勉強は1日にして成らず、努力をしてこそ身につくものじゃよ。石版で楽して習得する根性はどうかと思うぞ」と言ってきた。
3人は顔を見合わせ無言だ。
『帰ろうか』
「うん」
「うん」
帰り道にはもう感動は無かった。
まだ阿鼻叫喚でパニクっている冒険者の中に余裕で走り回って遊んでいるだけの奴も居るのに気が付いた。
通り掛かった扉の向こうの部屋では新人モグラが先輩モグラに叱られている。
「ダメじゃないか、しっかり〇〇しないと」「すいません先輩、でも、、」「でもじゃない、言い訳するな!」バシッ!どの世界も仕事は辛いな。
何事も無く出口まで辿り着いた。
大そうな仕掛けの岩の扉は横に非常口が付いていた。
『元気でなダイキ、ヒロキ』
「仙さんも」
「ありがとうございました」
死線を潜り抜けた戦友と別れ、1人寂しく自宅に帰った。
寝床に倒れ込む。(疲れた、今は睡眠こそジャスティス、、)
暫くすると深い眠りに着いた。
〜6日目終了〜
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