最終話 Stressがゴイスー

「お疲れさん」

 リーフが1人に2つ『ベロターズ・オリジナル特別な存在なのですから』を手渡す。

「嬢ちゃん…早いトコ『ヒール』癒し+体力回復頼むわ…マジで」

 ベンケーは疲れ切っていた。

 もはや自身の『キズバン』軽い怪我を癒す程度では役に立たない程のダメージである。

「………んごっ………」

「んにゃ? ……クロウ…息してないにゃ…」

「急ぐのよ!! 薄い胸張り出してないで、クロウを大霊界から呼び戻すのよ!!」


 ………

「綺麗な川で…汚い婆さんが『ベロターズ・オリジナル渡し賃にも使える高級キャンディ』を要求してきたでござる…」

(危ないトコだったんじゃないかしら…)

 ヒトミが不安そうにクロウを見ていた。

 毛繕い中のミゥ最優先で回復してもらった

「大体OKね!!」

 肩で息するベンケーRPGなら画面オレンジ数分前まで大霊界の入口に立っていたクロウRPGなら画面レッド…あるいはHP3


「ところで『しずか』…薔薇母バラモはどこでござる?」

 少しだけコッチの世界に戻ってきた意識がハッキリしてきたクロウが辺りを見回す。

「アッチの箱に入って上に行ったにゃ」

 指さす先にガラスドアエレベーター

「あの狐!! 戦いもせずに上へ参りましたですとー」

 ヒトミが意味も無く大声を上げる。

「参りますにゃ」

「まったく気づかなかったわ…なんか腹立つ」

 リーフが『ほっこりスエット飲むとほっこりするドリンク』を飲みながら呟く。

「追うのよ!! なんか妖しい根拠は無い!!」

 ヒトミがエレベーターを指さす。


「まったく、フワフワ浮いてるくせに、さらなる浮遊感を求めるとは…」

 チンッ…ザワッ…

「なんか毛が逆立ったにゃ…気持ち悪いにゃ」

「どんだけフワッ好きなのかしら、あの狐」

 とりあえずヒトミの文句が途切れない。

 なにせ、リーフを除けば24hヒール発動唯一無傷なのであるRPGなら画面ブルー、元気が有り余っている。

 突き当りの部屋のドアを開けると、ガラス張りの部屋に横たわる薔薇母バラモ

「なっ? しずか!!」

 クロウがガラスに手を付く。

「あの狐ー!! 人が戦っている間に寝てやがった!!」

 ヒトミがガラスを蹴りあげる。

「違う…様子がおかしい…」

 リーフが、ぐったりと横たわる薔薇母バラモに違和感を感じた。

「あれは…薔薇母バラモじゃない…?」

 自分で確認するように呟くリーフ。

「狐だろうがよー!!」

 ヒトミが薔薇母バラモを指さす。

「違う…耳がねぇ…」

 ベンケーが違和感に気付く。

「なに? ん? 尻尾もない…」

 ヒトミが首を傾げる。

「言っておろう!! あれは『しずか』でござる!!」

『ワシも…妖気を感じぬ…』


 ドアを開けて、『しずか』に近づくクロウ。

「……『しずか』…」

 深い眠りから目覚めた様に、気怠い目でクロウをみつめる『しずか

「…九郎さま……」


 グッと『しずか』を抱き寄せ、涙ぐむクロウ。

「九郎さま…私は…」

「何も言わずでよい…今は…ただ…無事でよかった」

「……はい」


 数か月後…

 リーフの邸宅にて…


「こんなとこに家建てるとはね…」

 ヒトミが湖面のウォータードラゴンを眺めながら呟く。

「いいじゃねぇか、なんとなく慣れてるし」

 ベンケーがバーベキューの準備を急いでいる。

「何を焼こうかにゃ?」


 リーフは王都『ラージサムタクスクソ高い税金の意』の隣、湖と山を買って家を建てたのだ。

「そうよ、港も近いし、ミゥも気にいってるし、ベンケーだって墓参りが楽じゃない、ココしか考えられなかったのよ文句言いつつ皆で住んでる

 リーフが焼く前にニンジンをパリポリ食べだした。

「協調性!!」

 ヒトミがリーフを指さす。

「んぎゃぁぁぁあ」

 そして指さし返されるホントに学習しない


「そうでござる…」

 クロウの隣にシズカが座る。

 元気に笑う女の子を抱いて…

「ふにゃふにゃ…にゃ」

 ミゥが赤ん坊の頬を軽く突いて笑う。


「酒はあるんだろうな?」

 バッカス達、船乗りも合流して宴会が始まる。


「とりあえず、王都の周りの土地を買い占めるとこからまったくブレない王都制圧プラン始まる野望の第一歩初志貫徹に乾杯!!」

 リーフが薄い胸を張り出して乾杯の音頭をとる。


 カオスな世界は、ダラダラと続いていく…。


 fin

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