第89話 Tiredがゴイスー

「所詮、造られた神様…いえ、誰かの傲慢、その残りカス…」

 リーフが造魔ゾーマの手を払う。

「アンタ、私に攻撃できないんでしょう?」

「……」

「図星ね、私はアナタの器、ならば傷つけることはできない…はずよね」

 リーフがニタリと笑う。

「確かに、私には出来ない、が、そのために龍人ロンレェンがいる」


「んにゃ?」コレのことかにゃ

 すでに事切れた龍人ロンレェンが3体、床に転がっている。

 ご丁寧に、メイスで頭部を潰されて…

「バカな…」

 造魔ゾーマの身体がグズグズと崩れていく。

「もう…嬢ちゃんのそっくりさんには見えねえなぁ~」

 血だらけのベンケーがメイスを引きずりながら近づいてくる。

 クロウとミゥが後ろに続くが、龍人ロンレェンの強さが、よく解るくらい、3人共かなりの深手を負っている。

「休んでいていいわよ」

 チラッとベンケー達に視線を移したリーフが素っ気なく答える。

(お言葉に甘えて…)

 ヒトミもソロッとリーフの後ろに下がっていくノーダメージだが、なんか居心地が悪い

「アンタも休みなさいな…」

 造魔ゾーマを見るリーフの視線は恐ろしく冷たい。

「なぜだ?」

「気持ち悪いのよ…この国」

「なに?」

「区画整理された街、管理された人、おそらく国全体に無駄が存在しない…」

「素晴らしいことじゃないのか」

「それが気持ち悪い…」

「理解できないね…ゴブッ…」

 いよいよ造魔ゾーマは立っていられなくなってきた。

「目的地まで真っ直ぐ最短…そんなの楽しい?」

(自分が方向音痴だからって…)

 ヒトミは言いかけたが…止めておいた空気を読んだ

「フフ…無駄が楽しいか?と聞いているのか?」

「いいえ…聞くだけ無駄だから、ロジックじゃ理解できないこと…そっち側に私の望む世界があったから…それだけよ」

「ロジック…」

 崩れた造魔ゾーマの顔、不思議そうにリーフをみつめる。

「だから、私の好きな世界を壊されたくないの…花の色まで統一された、この箱庭は好きじゃない!!」

 リーフが造魔ゾーマの後頭部を踏み抜く。

「クククッ…だから…オマエは消えろ…私の世界に神はいらない!!」

「グググ…リリス…やはり、人に育てさせたのは過ちだったか…」

「知るかバカ…私はリリスじゃない、『泰梅ティメィ』でもない」

 ググッと踏み抜く足に力が込められる。

「私の名はリーフレス・ティーメィカァ葉っぱの無いお茶屋さん、この薄汚れたカオスな世界の支配者なる予定よ」

(リリス…『泰梅ティメィ』の自己顕示欲、承認欲求が強く出過ぎたのか…それとも…まぁいい…しばらく様子を見るか…)

 すでに事切れた造魔ゾーマリーフに踏みつけられている顔は崩れながらも笑っていた。


「ふぅ…大したことない相手だったわ」

「嘘吐け!!」

 ヒトミがズイッとリーフに近寄る。

「アンタ、アタシがいなかったら腐らせなかったらヤバかったじゃない魔法効かない相手!!」

「……人選の…その…あの…勝利!!」

 グッと拳を握るリーフ薄い胸の前で

 大負傷の仲間達ミゥ・クロウ・ベンケーの前でズイッと胸を張る悲しいくらいの絶壁リーフ。

「ご苦労!!」


 ドッと疲れが出る、愉快な仲間達であった。


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