第87話 Fightがゴイスー

(いきなりか…なんとも…いやはや、親子の再会にしては派手なことよ…)

 薔薇母バラモがクスッと笑う。

 先手必勝の上位互換、『不意打ち』である。

「えっ?」

 ヒトミの目が点になっている。

「何してるのよ…早く殺っちゃいなさいな」

 リーフがヒトミの背中を蹴る。

「えっ? えぇー?」

 ヒトミが躊躇している間にミゥは造魔ゾーマに飛びかかっている。

「問答無用にゃー!!」主が攻撃したので良いと判断した

 造魔ゾーマの前にシュッと龍人ロンレェンが立ち塞がる。

「んにゃ?」

 ミゥの蹴りを龍人ロンレェンが両手で止める。

「躾の悪い虎の相手猫だけどは私達が致しましょう」

 龍人ロンレェン達の金色の目がギラッと光る。

「3対1じゃ卑怯でアル…ござろう」

 クロウが『薄緑うすみどり』の柄に手を掛ける。

「親子喧嘩に興味は湧かねぇ…俺もコッチにするぜ」

 ベンケーが『スプリガンメイス命名ベンケー』をブンッと振り抜き構える。

「ほほう…では、私の相手は…」

 炎に包まれた造魔ゾーマが手を一振りして、炎の中から姿を現す造魔ゾーマ、焼けただれた肌がビキッ…ビキッ…と音を立てて再生していく。

「仮にも、お前の創造主だ、癒しヒールくらい使える」

 造魔ゾーマニヤニヤと笑うその顔はリーフそのもの

「気にいらないのよ…その顔が!!」

 リーフがズイッと前へ出る。

(なんだろう…同じような顔が言い争っている光景…気持ち悪い本能的な恐怖が倍率ドン!! した感じで吐きそう…)顔色の悪いヒトミ。

「はっ!?」

(まさかして…私は、リーフ呪い主もどきと戦う感じになっているのでは望まぬ展開…ある意味 下剋上?)

 今さらながら、置かれた立場に気付くヒトミ。

 チラッと薔薇母バラモを見てみる……

「ん? どした?」

 そんな顔で目が合った。

(やる気ねぇ…戦う顔つきじゃねぇ完全に傍観者気取る気の顔だ…)

 猫娘ミゥはすでに天敵『龍』しか見えてない。

 剣士クロウは馴染ある『龍』しか見えてない。

 筋肉ベンケーはリーフもどきを避けたに違いない。

(なんかズルい…)

 アッチ側の3対3の構図が羨ましいヒトミ絶対、コッチ側よりアッチ側の方が生存率が高い


『ワシ…アレ倒したら『龍殺し』の称号とか付いちゃうんじゃろうか?』

 妖刀『薄緑うすみどり』は妙に高揚していた。

「ふっ…刀が脈打つようでござアルよ…」


 すでに始まった戦いに割って入る隙は無いヒトミ涙目


「同じような顔で気色悪いこと止めてくれない?」

 リーフが造魔ゾーマの再生を見て不敵に笑う。


「再生が追っ付かないくらいに切り刻んでやる!! 暴風ボーフウ!!」

 右足をヒュッと蹴りあげるリーフ。

 風が造魔ゾーマとリーフの中央に集まり、無数の『シルフ』が造魔ゾーマに襲い掛かる。

「細切れにされろ!!」

 シルフのカミソリのように薄い羽が造魔ゾーマの肉を切り裂く。

「再生する…と言ってるだろう」

 血だらけの造魔ゾーマが不敵に笑う。

「再生させない!! オン・バザラ・タマクカン・ヤシャ・ハーン!!」

 ヒトミが『サブナックダガー傷口が腐るえげつないダガー』を乱舞させて造魔ゾーマを切り裂く。

「グッ…」

 造魔ゾーマの顔がにわかに歪む。

「さ~ら~に、『暴炎ボーエン!!』

 リーフの顔もニタリと歪む。

 右手からサラマンダーが次々と飛び出し、造魔ゾーマの傷口から体内へ潜り込む様に内側から焼いていく…

「ギャァァァ…」

 低い声で苦悶の声をあげる造魔ゾーマ


「グフッ…ギャァハハハッハ」

 リーフの狂ったような笑い声が響き渡る。


(案外…苦戦しているじゃぁないか…造魔ゾーマ)

 ロビーの隅で壁にもたれ掛り戦いを観察している薔薇母バラモ

(そろそろ…行くか…)



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