第86話 Buildingがゴイスー

「涼しいのにゃー、早いのにゃー」

 空調の効いた車内、馬も居ないのにスイスイ走る鉄の箱。

「コレがUFOかー」

 ベンケーにとって知らぬ物は皆『UFO』である。

 U…Unknown(よく解らん)

 F…Freedom(自由すぎる)

 O… Object (物体)

 なのである。


「龍の亜人ね~」

 リーフが疑わしい目を龍人ロンレェン見ているジト目で

(龍の時点で…モンスターなのに、なんでソコに人を混ぜるのよ…)

 改めて見れば、

 金色の目、立派な角、青やら緑やらカラフルな鱗…

 ミゥと比べれば、明らかに戦闘的な外見である。

(にして…この控えめな態度…それが逆に強さを醸し出している…)

 このレベルが使いっぱ、とはね…

 住処に行けば、何が出てくるのやら…

 静かな車内で揺られること4時間。

 ミゥはすでに寝ている。

 なんだろう…この緊張感の無さ。

 ちょっとイラッとしたリーフの人差し指がヒトミの心臓に向けられる。

「んぎゃぁぁぁぁ」

「少しは緊張しなさいな」

「不意打ちで緊張を促さないでくれる!!」

「こういう立場だと理解しろと言ってるのよ…私は」

 龍人ロンレェンに聴こえる様に大声で話すリーフ。

「ご心配なさらずとも、無事に送迎するように言いつかっております」

 ニコッと笑って助手席の龍人ロンレェンがリーフの座る後部シート側へ振り返り視線を合わせた。

(いやな目…命令あれば、いつでも殺せる…って言いたいのよね)

「みぃぎゃぁぁぁ」

 ミゥが静かに威嚇しているなんとなく本能的に嫌い

『龍』対『猫』…『虎』でギリ互角なのだ、ややベース猫<虎に差を感じる。

(私とミゥで1人賢者+猫娘≧龍人3バカで1人3バカ=龍人薔薇母バラモ、どちらに動く? それが解らない以上、迂闊に行動を起こせないわね)

 リーフが大人しく従うわけは、薔薇母バラモの真意を測りかねているからだ。


 思惑がギュウギュウ詰めの電気自動車は、造魔ゾーマの待つ施設へ到着する。


造魔ゾーマ様がお待ちのはずです…奥へ」

 ガラス扉の前へ立つと勝手に開く自動ドア、ロビー正面には、やたらと牙の発達した毛深い象マンモスの置物。

『DNA』の文字が大きく並ぶ、コンクリートで造られた巨大施設。

「かつてはNOA箱舟と呼ばれていた、遺伝子研究所…そして保管庫でもある」

 薔薇母バラモが先頭に立って、私設の説明を始める。

 この惑星に生きる、生きていた生物の遺伝子を可能な限り解析、保管した施設。

 そして…遺伝子を混ぜて、くっ付けて、好奇心の赴くままに暴走した学者達の桃源郷。

 ノアは神になろうとして、数多の生物を産み出した。

『怪物』を産み『亜人』を産み…そして『人』を造りだした。


「お帰り…ティ梅可愛メィカァ

 動く箱からエレベーターロビーに降りてきた金髪の女性。

「いや…リリス、と呼ぼうか」


(この女…嬢ちゃんに似ている…親子? いや姉妹…歳の違う双子のようだ)

 ベンケーが金髪の女性を驚いた顔で見る。


「アンタが造魔ゾーマ…ね」

 リーフの右手がスッと前へ伸びる。

「死ね…造魔ゾーマ!! 『エン』!!」

 造魔ゾーマの足元から火柱が立ち上った。

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