意外な外伝 酔いどれ船長バッカス編
第84話 Voyageがゴイスー
(あの娘っ子に雇われて1週間…過去の、どの航海よりキツイぜ)
『船長急募』
前の船を失って…4年、俺は似合いもしない丘の上で荷物運びのバイトをしていた。
昨今、怪物が増えてきて、貿易も気楽な稼業じゃなくなった。
ハイリスク、ハイリターン、博打のような商いに金持ち連中は手を引きはじめていた。
俺が雇われていた商社も、貿易を縮小して…俺の指揮していた船は老朽化して補修の予算は降りず、廃船されることになった。
ガキの頃から船乗りで、人生の大半を海で過ごした俺にとって、陸の生活は馴染めないことばかりだ。
知らず知らずに酒の量が増えていった・・・
ダメ元の面接で、まだ若い娘っ子に雇われちまった。
「経験は申し分ないわね」
「にゃいわね」
「顔も船長って感じよね~」
金髪の細っこい娘っ子
猫娘
気の強そうな娘
金なんか幾らだって構わなかった、もう一度船に乗れるなら…
バッカス航海日誌
航海初日…
何やらトラブルがあったようで、出航が夜になっちまった。
出航できねぇかも知れねぇと思ったが、まさか夜逃げみてぇに出航するハメになろうとは…久しぶりの船旅なのにケチが付いちまった。
2日目
まさかのクラーケンが並走してきた。
珍しいことではあるが、おとなしい生き物だ、最近、船も珍しくなって、ヤツも浮かれてたのかもしれねぇ、甲板から眺めようと酒を飲み干して出てみりゃ、クラーケンが暴れてやがる。
何があったかしらねぇが、クラーケンが襲ってくるなんて初めてだ、俺は下へ降りてクラーケンの目玉に大砲を食らわせてやった。
ったく…何があったのやら…反動で頭を打ったらしく、気づけば大砲の後ろで寝ちまってた。
3日目
猫娘が「空を飛ぶにゃー」とかなんとか言って、マストを駆けのぼっていった。
手慣れた船乗りより早く登って、何か捕まえて飛び降りてきやがった。
咥えた鳥は…『
群れを成す『ハーピー』に帆を切り裂かれ、修理に手間取っちまった。
金髪の娘っ子に頭を撫でられて飴玉を貰って上機嫌だったが…何を褒められたのか俺には理解できなかった。
4日目
飲み過ぎて、海で吐いちまった。
まったく船乗りが船上で酔うなんて情けねぇ…丘暮らしで鈍っちまったらしい。
回る目で海面を見ていたら、さらに気持ち悪くなっちまった。
気付けば、視線が合った人魚に襲われていた…
人魚ってのは、鱗の生えた猿みてぇな顔に魚の尻尾が生えてやがって好きになれねぇ、あの緑の身体は臭ぇし、何より気持ち悪りぃ…
娘っ子に責任だとか言われて、甲板清掃を命じられた。
俺、船長なんだけど…怖くて逆らえねぇ…
5日目
同部屋のクロウとかいう異国人と将棋とかいうボードゲームに興じた。
気付けば、有り金を巻き上げられていた。
いや異国人にじゃねぇ、ベンケーとかいうクソ坊主にだ。
6日目
狐のような女が宙を浮いているように見えた…。
大分、酔っていたらしい。
7日目
『チャイナ』に着いた。
娘っ子に睨まれて怖かった。
なんか、金目の物をかき集めるよう言われ、船員が街を走り回っている。
誰も逆らえない雰囲気に飲まれ、居ないときも緊張感が抜けない。
あるいは病かもしれない。
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